フローレンスの駒崎さんが良い記事を書かれています。
「あなたしかできない仕事」の危険
ぼくを含めて、これからの時代、ビジネスパーソンは「代替不可能な人材」であるべきだと指南する論調は強いです。そしてこれは、たしかに真実でしょう。ぼくは日々、自分が「代替不可能」であるための努力に精を出しています。入れ替えができない人材であれば、グローバリゼーションの波を乗り切りやすくなりますからね。
「代替不可能な人材でいる」ということは、それ自体が「気持ちのよい」ことでもあります。「自分じゃないとできない仕事がある」という事実に身を投じている人は、責任感を背負う反面、自分の存在意義を強く実感することができます。
一方で、駒崎さんの記事では、スタッフがそういう満足感を持ってしまうと、結果的に組織のためにならない、という指摘が展開されています。
「あなたは個人としてはかけがえのない人だけど、職場としては代替可能な人間です。それは僕も同じです。誰かが誰かの代わりになる。そんな組織にならなければこの組織はよくならないし、僕が求めるのはそういう管理職です」と100万回くらい言いました。
これはよくよく考えると、身も蓋もない話です笑 駒崎さんは「やりがい」に関しては、組織のビジョンとして提供するべきだ、と書いています。
これでモチベーションやプライドを保てるのか。危惧する方もいるでしょう。でも、仕事に過度な「自分」はいらない。「自分の職場でのポジション=自分の存在価値」と考えるのは間違っている。
(中略)では社員は仕事で自己実現はできないのか。そんなことはありません。それは組織がビジョンとして提供すべきなのです。
完全に同意なのですが、あえて問題を指摘すれば、日本の多くの企業においては「ビジョン」なんてものは有名無実になっています。完全に肌感覚の数字ですが、ビジョンが社内で共有されており、スタッフの自己実現にまでつながっている組織というのは、0.1%以下なのではないでしょうか。
そう考えると、日本で働く会社員たちが過度に自分を追いつめてしまうのは、「組織のビジョンを通した自己実現」に失敗してしまい、「代替不可能な人材になることでの自己実現」に注力しすぎている結果なのかもしれません。ビジョナリーな組織が増えれば、過労死やうつも減るのかもしれませんね(…もっとも、ビジョンに共感させて搾取する「やりがい搾取」の危険もあるのですが)。
「誰もやらない仕事」はある
駒崎さんの記事で触れられていないポイントとして個人的に書いておきたいのは、「あなたしかできない仕事」はないけれど、「誰もやらない仕事」はある、という話です。どういうことか。
この世には「お金にもならないので、誰も本気で取り組んでいない仕事」が、実は無数に溢れています。それは「お金にならない」という理由から、利益追求型の組織においては、往々にしてスルーされる仕事です。金にならない仕事を、会社がやるのは変な話ですから。
しかし、実際には、世の中には「お金にはならないけど、本気で取り組む価値がある仕事」が溢れています。それは大層な話ではなく、「近所の子どもとあそぶこと」だったり「近所のおじいちゃん・おばあちゃんの話し相手」なんて仕事だったりします。
もう少しスキルフルな方向に振れば、ぼくがやっているような「NPOのマーケティング無償支援」「キャリアに悩む学生の人生相談」なんてところが挙げられるでしょう。これらもその活動の意義はありますが、残念ながら「お金にならないから」プレーヤーが少ないのが現状です。
こういった仕事は、そもそも「代替不可能性」を論じる以前に競争が発生していません。ゆえに、「自分がやらなければ、他に誰がやるんだ?」というかたちで「やりがい」を実感しやすいのです。変に会社で頑張るより、外でボランティアでもした方が、よっぽど自己実現には近づくと思うのです。
ついでにいえば、多くの人が「お金にはならないけど、本気で取り組む価値がある仕事」をするようになれば、社会はそれだけよくなるでしょう。自己実現も進み、社会も改善する。いいこと尽くめですね。
まとめ。
・仕事のなかで「代替不可能性」を追求する動きが進んでいる。
・しかし、それは組織の論理とは合致しない部分がある。組織としては「代替不可能な人材」が溢れることはマイナスの結果をもたらしかねない。
・組織に共有できるビジョンがあれば、やりがいを与えることは可能。
・しかし、多くの企業には共有可能なビジョンが存在していない。
・世の中を見渡せば、会社の外には「お金にならないから誰もやっていない仕事」が無数に溢れている。
・そういった仕事は競争が発生していないため、自分のオリジナリティを実感しやすい。
・仕事にやりがいがない…と悩んでいる人は、休日の時間を使って「お金にならないから誰もやっていない仕事」に取り組んでみては?
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