水俣病:症状一つ、熊本県も認定 国審査会の裁決受け

毎日新聞 2013年11月01日 22時27分(最終更新 11月02日 02時36分)

下田良雄さん(左)に水俣病の認定書を手渡す熊本県の蒲島知事=熊本県水俣市で2013年11月1日午後6時36分、徳野仁子撮影
下田良雄さん(左)に水俣病の認定書を手渡す熊本県の蒲島知事=熊本県水俣市で2013年11月1日午後6時36分、徳野仁子撮影

 国の公害健康被害補償不服審査会が熊本県の水俣病認定棄却処分を取り消す裁決をした同県水俣市の下田良雄さん(65)について、県は1日、水俣病と認定した。蒲島郁夫知事が職権で決断した。知事は同日夜、同市で下田さんと面会。「長くご心労をおかけしたことをおわびします」と謝罪したうえで認定通知書を手渡した。一方、環境省は今回の裁決を「個別案件」と指摘。認定基準を見直す必要はないとの意向を示した。

 裁決は10月25日付で、1日午前、県と下田さんに裁決書が郵送で届いた。現行の認定基準は複数の症状の組み合わせを要件としている。裁決書によると、魚介類を介した水銀摂取が明確であれば一つの症状でも認定できるとした今年4月の最高裁判決を踏襲。山間部出身だが行商人を通じて魚介類を多食し、手足のしびれなどの感覚障害がある下田さんについて「水俣病として行政認定することが相当」と結論付けた。

 また、県の審査を「極めて不透明でずさん。疑念は他の資料の記載にも広がりかねない」と批判した。

 下田さんは蒲島知事と面会後「長かった。謝罪は当然。私以外にも症状を持つ人がたくさんおり、一刻も早く認定基準を見直して認定してほしい」と話した。【笠井光俊、松田栄二郎】

 ◇基準、事実上崩壊も

 公害健康被害補償不服審査会の裁決を受け1日、記者会見した環境省の塚原太郎環境保健部長は「今回はあくまで個別事案」と強調、水俣病認定基準は見直さない姿勢を崩さなかった。しかし、不服審査会は行政庁への拘束力を持つ独立審査機関で、今回の裁決は委員6人の全会一致。今後も同様の判断を示すことが考えられる。不服申し立て→裁決→逆転認定の流れが出来上がれば、認定基準そのものが崩壊しかねない。

 水俣病の認定基準は「狭き門」と批判されてきた。熊本、鹿児島、新潟3県で2万人を超す申請者に対し、認定患者は3000人弱。感覚障害や視野狭さくなど複数症状の組み合わせを厳格に求めているためで、旧環境庁部長が1977(昭和52)年に出した通知に基づくことから「52年判断条件」と呼ばれる。

 裁決は、水銀摂取歴が明白なら、単一症状でも認定できる余地があるとした4月の最高裁判決を「妥当」と評価した。裁決はさらに「52年判断条件に適合するものだけが水俣病ではない」と断じ、条件自体は否定しなかった判決より一歩踏み込んだと言える。

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