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【郡山市の人口増加】「安全・安心」PRを(10月29日)

 郡山市の人口が県内の市町村でトップになった。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降、減少していたが、最近は微増ながら回復傾向が見られている。人が集い、にぎわいを生むことは「都市力」の強さにつながる。避難している人たちが戻るなどして、一日も早く震災前の水準に戻ってほしい。
 県が発表した今月1日現在の郡山市の推計人口は32万8119人。いわき市を253人上回った。両市の発表では9月の時点で郡山市が最多となっていた。県と市町村では集計の基準日が異なるため、県と市の数字に時間差が生じていたが、県の発表で名実ともに郡山市が「1位」となった。
 郡山市は昭和40年の合併で現在の地域になった。人口でいわき市を抜いたのは初めてだが、市の人口は震災と原発事故で大きく動いた。震災前の平成23年3月1日は33万8858人だったが、放射能への不安などから親子らがふるさとを離れた。歯止めがかかったのは昨年11月で、以来、微増が続いている。
 市内では1日、産業技術総合研究所が福島再生可能エネルギー研究所を設立、来年4月には各種研究を進める広大な拠点施設がオープンする。さらに製造業や情報関連企業の立地で、雇用が生まれたことが、人口増加の要因とみられている。震災以降、停滞気味だった人の流れが活発になっている。
 避難者が所在地を届け出る全国避難者情報システムによると、郡山市から他市町村へ移った人は1日現在、5574人。ピーク時の2月1日現在の6040人から500人近く減っている。放射線量が下がったことなどで、避難している人たちが戻ってきている傾向も出ている。
 人口は仙台市に次いで東北2位だが、震災直前と比べると、まだ1万人以上少ない。震災前に戻すには除染の徹底と安全・安心情報を積極的に流すことによる風評被害の払拭[ふっしょく]、人を引きつける魅力あるまちづくりなどが重要だろう。子どもを持つ親や県外からの転勤者の中には、今も不安を持つ人たちもいる。
 郡山市の日常は何の心配もなく、衣食住とも十分であることなどが、県外に広く浸透すれば、今後も減少に転じる可能性は低いだろう。人の集合体は都市の強さ、エネルギーになる。巨大都市・東京がいい例だ。内外へのアピールで人口を増やし、活気にあふれた郡山市を、未来を担う子どもたちのためにもつくってゆきたい。(半野 秀一)

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