- [PR]
国際
【一筆多論】論争呼ぶ米国の新軍事戦略論 佐々木類
2013.11.2 08:25
(2/2ページ)
中国本土を攻撃せず、経済封鎖に主眼を置くのは、紛争を膠着(こうちゃく)状態に持ち込んで軍事紛争を穏便に終わらせるためだ。本土に被害が出なければ、疲弊した中国政府が自国民に対し、例えば「われわれは米軍を追い出し、米国とその同盟国に教訓を与えた」と一方的な勝利宣言をさせることが可能になる。つまり、相手側に花を持たせつつ、米国と同盟国が実質的な勝利を収めた形で紛争をソフトランディングさせるという発想だ。
これに対し、コルビー氏は米軍が検討を進める「エアシーバトル(空海戦闘、ASB)」の推進派で、ハメス氏のOC構想について、「経済封鎖はロシアを含む多国間の協力が必要であり、物理的に無理」「中国本土の軍事施設を攻撃せずに優位を獲得することは困難だ」などと批判を重ねた。
両構想とも、中国の「接近阻止・領域拒否(A2AD)」の打破を目的とする点で共通する。
だが、OC構想が、紛争の終わらせ方まで提示した大きな「幕引き戦略」なのに対し、最先端の空海戦力を投入してA2ADに切り込むASBは、投入兵器や戦い方を示した「作戦」という違いがある。同じ土俵で論争すること自体に無理があるように思われる。
むしろ双方の長所を取り込んだ論議はできないものか。米軍の動向次第で日本の対中戦略も柔軟性が求められる。同盟国日本は米国内の戦略決定過程をしっかりフォローする必要がありそうだ。(論説委員)
関連ニュース
- [PR]
- [PR]