狭山事件:冤罪訴える石川さん 半世紀ドキュメント映画に
毎日新聞 2013年11月02日 12時39分(最終更新 11月02日 14時57分)
埼玉県狭山市で女子高校生が殺害された「狭山事件」で無期懲役が確定し、冤罪(えんざい)を訴え続けている石川一雄さん(74)=仮釈放中=の日常を切り取ったドキュメンタリー映画「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」(105分)が完成した。事件発生から50年。金聖雄(キム・ソンウン)監督(50)は「石川さんの人となりを知り、半世紀の重みを改めて感じてほしい」と話している。
作家の落合恵子さんや漫画家のやくみつるさんらが呼び掛け人となり製作された。朝のジョギングや茶の間で妻の手料理を食べるシーンなど穏やかな光景が映し出される。
裁判所の前のシーンでは「殺人犯というレッテルを貼られたままで、今も苦しんでおります」と、マイクを握って訴える。両親の墓参りを「無罪が認められるまで行けない」と拒んだり、夜間中学に行く夢を語ったりする場面もある。
石川さんは「事件の映画は何本もあるが、一番私に近づいて、踏み込んだ作品。ちょっと恥ずかしいけれど、事件に関心を持ってもらえればありがたい」。妻早智子さんも「この映画を見て人間石川一雄と、狭山事件を知っていただくきっかけになれば」と話す。
製作委員会は3日までYMCAアジア青少年センター(東京都千代田区)で上映会を開催中。12、13日に兵庫県民会館(神戸市中央区)でも上映するほか、自主上映会の開催を呼び掛けている。問い合わせは同委員会(042・316・5882)。【奥山はるな】
◇ことば【狭山事件】
1963年5月、埼玉県狭山市の女子高校生(当時16歳)が殺害され、遺体で見つかった事件。生徒が帰宅せず、父親に20万円を要求する脅迫状が届いたため捜査員が張り込んだが、犯人は逃走した。石川一雄さんが強盗殺人罪などで逮捕され、無期懲役が確定。94年12月に仮釈放された。石川さんは現在、第3次再審請求を申し立てている。