奈良公園:猿沢池の柳、枯死相次ぐ 対策を本格化
毎日新聞 2013年10月31日 14時16分(最終更新 10月31日 15時17分)
奈良公園(奈良市)にある猿沢池で近年、周囲に生えるシダレヤナギの枯死が相次ぎ、奈良県は来年から木を腐らせる菌類の侵入防止などの対策を本格化させる。菌類の成長を抑制するための土壌改良▽炭などでつくる防護壁を根の回りに設置▽木のストレスを減らすためライトアップの短縮−−などを検討中。かつて池を取り囲んでいたヤナギは現在、4本を残すのみで、奈良時代から親しまれてきた景観の復活を目指す。
同県によると、池(周囲約360メートル)の周囲には長年、約30本のシダレヤナギがあったとされ、2005年には28本が確認された。奈良時代に帝(みかど)の寵愛(ちょうあい)を受けた采女(うねめ)が、悲恋のためヤナギに衣を掛けて入水した伝説があり、興福寺の五重塔を遠景に、池にしだれるヤナギは古都を代表する風景の一つだった。
1960年代半ばから延べ約100本を植栽したが、植えても数年で枯れる木もあった。県が昨年から原因を調査した結果、弱った樹木の根元から入り込んで木を枯らす「ナラタケモドキ菌」が一因とみられることが判明。植栽を繰り返しても枯れてしまうのは、土壌中に菌が残っているためらしい。
県は造園の専門家らで「奈良公園植栽計画検討委員会」を設置しており、30日の会合で保全策を示した。来年1〜2月に池北側で予定する18本の植栽から始める。保全策は樹木医の指導を受けながら進める。
県奈良公園室は「伝説にも登場するヤナギを絶やすわけにはいかない。ぜひとも復活させたい」としている。【釣田祐喜】