重要美術品の経典 中国で競売・落札10月31日 18時17分
国の重要文化財が各地で所在不明になっている問題で、重要文化財と同様に、原則、海外への輸出が禁じられている「重要美術品」の仏教の経典が中国で開かれたオークションに出品され、およそ8000万円で落札されていたことがNHKの取材で分かりました。
文化庁は、事実関係とともに、ほかにも同様のケースがないか確認することにしています。
歴史上、芸術上、価値の高い重要文化財については、海外への流出などを防ぐため所有者が変更になったり紛失したりした場合は、文化庁に届け出ることが法律で義務づけられていますが、NHKが全国の都道府県に調査をしたところ、国宝1点を含む76点が所在不明になっていることが明らかになっています。
さらにNHKの取材で、重要文化財と同様に、原則海外への輸出が禁じられている「重要美術品」の仏教の経典が、ことし7月に中国・浙江省で開かれた古美術品のオークションに出品され、およそ8000万円で落札されていたことが分かりました。
「重要美術品」は、昭和初期から戦前にかけて法律で海外に輸出する場合は大臣の許可が必要とされた美術品で、昭和25年に今の文化財保護法が制定されて以降も、法律の効力が続いているとされています。
中国の会社「経緯は分からないが流通に問題ない」
およそ700年前に日本に伝来したこの教典は、京都の寺院から複数のコレクターを経て東京の会社経営者の手に渡り、昭和11年に「重要美術品」に認定されましたが、戦時中に別のコレクターに売り渡されたあと、行方が分からなくなったとみられています。
中国のオークション会社は、「中国で出回っていたものを仕入れたもので、どのような経緯で日本から中国に来たのか分からない。昔の法律に基づくものなので、現在は海外で流通しても問題ないと認識している」と話しています。
これについて、文化庁は、オークションに出品された経緯などの事実関係とともに、ほかにも同様のケースがないか確認することにしています。
文化庁「各地の教委と連携し対策強化」
文化庁美術学芸課の江崎典宏課長は「中国を中心としてアジアの新興国というものが、日本の美術品の需要国となっているし、20年前、30年前に比べてたやすく美術品を売り買いできるようになっている。このため、文化財の流出の危険性が昔よりも高まっているのはそのとおりだと思う」と話しています。
そのうえで「重要文化財や重要美術品は、国民の財産として流出を防ぐ必要があり、各地の教育委員会とも連携して把握を進め、対策を強化していきたい」と話しています。
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