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誰が山本太郎を当選させたのか――「山本親衛隊」という『宗教』 【古谷経衡】

WiLL 11月1日(金)14時51分配信

「裕福さ」で目が曇る

「山本太郎も三宅洋平も大好き。こいつらは絶対、日本を変えてくれると思ってる。山本太郎には総理大臣になって日本を救ってほしい」
 こう語るのは、音楽関係の仕事をしている半分フリーターのM(男性)。地方に住んでいるので小選挙区は山本に入れることはできなかったが、全国比例では三宅洋平に入れた。
 二十代の時に「ピースボート」に乗船して、政治のことや社会に目覚めた。ガンジャ(大麻)をやりながら世界のことを考えた。日本には何が必要か。自民党でも民主党でもない、若者の意見を代弁する政治家がいなければならない、と思った。
 そういう意味で、山本太郎は最高の人材。彼が当選しなければ日本は終わっていたから、最後の最後で救われたという感じ。原発は即時停止するのが日本人の責任であると思う。日本も地球も放射能で汚してはいけない。
 Mは、両親と建坪三十坪ほどの瀟洒な三階建て戸建て住宅に同居している「パラサイト」である。父親は鍼灸師、母親は自治体の団体職員。私と同じ三十歳だが、明らかに家庭の経済環境は彼のほうが恵まれている。
「(親の車を自分用に借りているので)維持費を自分の小遣いから捻出しなければならない」というニュアンスのことを言う彼からは、将来への不安は微塵も感じられない。
 仮に収入がゼロになっても、空調が効いた清潔な実家の住居に住めなくなることはない、という安心感が彼をそうさせるのか。新型のマッキントッシュで編集したという自作のPVを見せられたが、私の心に響くものは感じられなかった。
「(3・11以降の)山本太郎が好き」「山本に一票入れた」「三宅洋平のファン」云々という連中の共通点は、私の見た限りでは、概ね家庭環境が富裕であるという点だ。
 東京や大阪といった大都市で、中産階級以上の家庭に育って何不自由なく育った若い男女には、ある種共通した余裕がある。百円とか二百円のことにいちいちこだわらないという経済的余裕はもとより、何か初期段階から備わっている人生の備蓄のようなものを感じる。
 附属中学・高校からそのまま受験競争を経ずしてそれなりのレベルの私立大学に行きました、という人間も多い。冒頭で紹介した伊集院光は自らを「下町の汗達磨」と自嘲しているが、彼らの世界に、伊集院の好きな一泊二千円のカプセルホテルや二十四時間営業のうどん屋や場末のラーメン屋というような光景が入り込む余地は一切ない。
 彼らはそういった汗臭さやうらぶれた油臭とは無縁で、そうした世界があることも知らずに生きている。伊集院が山本から遠ざかっていったであろう理由が、何となくわかった気がした。

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最終更新:11月1日(金)14時51分

WiLL

 

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