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ここが知りたいQ&A 有害環境対策法になぜ反対?メディアは言論の自由抑圧と反発自民党は「青少年社会環境対策基本法案」の今国会提出を検討している。性や暴力表現などの有害情報から、子どもを守るための法案だが、テレビ局や大新聞はこぞって反対している。メディア側はこの法案になぜ反対するのか。(社会部・森田 清策) 相次ぐ地方の制定要請自主規制では不十分Q この法案の内容は。A 性的な逸脱行為や暴力的、残虐的な行為を誘発する恐れがある社会環境から、十八歳以下の青少年を守ることが目的となっています。そのために、業界ごとの自主規制組織を設立させて、その組織に対して国や都道府県が必要と認めた場合、事業者に指導・助言・勧告を行い、従わないときはそれを公表するというのが柱。対象となるのは、テレビ、雑誌、インターネット関連、ゲームソフトなどです。 Q この法案はどうして出てきたのですか。 A 背景には、メディアの悪影響を受けた青少年犯罪が続発していることがあります。一昨年のゴールデンウイークに発生した西鉄高速バスのハイジャック事件で、佐賀家裁はインターネットが犯人の少年の人格に少なからぬ影響を及ぼしたことを認めました。また、同八月、大分県野津町で起きた一家六人殺傷事件でも、殺人などの容疑で家裁送致された少年に対し、大分家裁は「日ごろから残虐なテレビゲームや映画の影響を強く受けて殺人に対する抵抗性が低くなっていた」と指摘しました。 このほか、テレビ、ビデオなどで、暴力的な映像を何度も目にすると、暴力に対する抵抗感が薄らぐだけでなく、行動化されやすくなることは多くの心理学者が指摘するところです。 Q なぜ、メディア側が反対するのですか。 A 日本民間放送連盟などは先月、法案に反対するためのシンポジウムを開きました。その中で出た反対理由をまとめると次のようになります。@青少年犯罪増加の原因を「社会環境」にのみ求めるのは短絡的A青少年健全育成の美名に隠れた言論・表現の自由の抑圧だBテレビは、視聴者からの意見や苦情を受けつける第三者機関を設立するなど自浄努力を行っている、などです。 しかし、これらの主張は的はずれです。青少年犯罪の増加は社会環境だけが原因ではありませんが、すでに指摘したようにテレビなどのメディアが最近の青少年犯罪の大きな要因になっているのは事実です。もちろん言論の自由は大切ですが、健全育成と調和をとるための法律は多くの国にあります。テレビの自浄努力がなされていないことはチャンネルをひねればすぐ分かります。 Q 法案に対する関心は高いのですか。 A 地方議会では青少年を有害環境から守り、健全な育成を推進するための「青少年健全育成基本法」の制定を求める意見書の採択が進んでいます。意見書を採択した地方議会はすでに七百を超えています。こうした動きは、法案に反対するメディアは報道しないのですが、世論の関心は高いのです。
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