台風26号によって30名以上の死者が確認されるなど、甚大な被害を受けた伊豆大島。行方不明者の捜索が今も続いている中、地元で迷惑な騒動が起こっているという。

「これは神風特攻隊の怒りだ!」

 取材に訪れたテレビディレクターにいきなりまくし立てたのは、地元在住だという中年男性。

「占領政策で押しつけられた大麻取締法で日本の伝統文化が破壊された。その復活を願う先人たちのために戦った同志が犯罪者にされた。これに日本を守って散った6,000人の神風特攻隊が怒った。この天災は先人たちの怒りが起こしたものだ!」

 男性の連れとみられる2人の若い女性も、ディレクターに「私たちを映して、メッセージを撮影して流して」と、しつこく頼んできたが、断られると「あんたの地元も不幸になるよ」と捨てゼリフを吐いて、ほかのメディア関係者のもとへ走ったという。

「女性の着ていたトレーナーには大麻の葉の絵が描かれていて、話の内容から彼らが大麻解放運動をやっている連中だったのでしょうが、多くの取材陣が困惑していました」とディレクター。

 大島での大麻運動といえば一昨年、現地の民家で大麻を隠し持っていた大麻取締法違反の現行犯で大麻研究家ら7名の男女が逮捕。当時、警視庁組織犯罪対策課からは「大麻を用いて宗教的な儀式などを行うサークルがあった」という話が出ていた。グループの中心人物は4月の一審で懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けたが、今回ディレクターに訴えてきた男性が、その一員だった可能性もある。

 いずれにせよ台風被害の原因を大麻取締法と結びつけるのは、あまりに荒唐無稽な主張だが「実はあの中年男性が叫んだ後で、それを目撃した地元の方からは“相手にしないでくれ”と言われたんですよ」とディレクター。

 住民の話では、以前男性らが民家を一軒ずつ回って大麻の使用賛成の署名を求め、断られると“非国民”だの“愛国心がない”だのと、まるで今回の騒動のように罵倒してきたというのだ。

「亡くなった方、いまだ行方不明の方もたくさんいて、生きている方々も仕事に大きな影響が出ている。住民がみんな深刻な顔をしているのに、それを自分たちの大麻運動に利用するのですから悪質。正直、取材者も悲惨な現場を見てやり場のない悲しみに暮れていたので、記者の中には、その男性に“ふざけるな”と怒っている人もいました」(同)

 大島では今回の被害で開催予定だった各イベントが中止になっているが、観光協会によると来年1月下旬から2カ月にわたって行われる「椿まつり」は開催を目指すという。協会関係者は「そういう一部の心ない輩もいますが、住民のほとんどはそんな連中とは違うので、ぜひきれいな椿を見にきてください」と話した。
(文=鈴木雅久)