新弟子検査を終えたイチンノロブ=福岡市の秋本病院で(岸本隆撮影)
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モンゴルの怪物が入門した。31日に福岡市内の病院で行われた新弟子検査で、モンゴル遊牧民から初めての角界入りとなるアルタンホヤグ・イチンノロブ(20)が湊部屋から受検。「早く関取になれるように一生懸命やりたい。横綱を目指したい」と誓った。
190センチ、183キロの巨体。17歳までウランバートルから400キロ離れた草原で遊牧民として生活し、鳥取城北高の石浦外喜義監督にスカウトされ相撲留学。今春卒業後は同校のコーチとなり、今年9月の全日本実業団相撲選手権で個人優勝。外国出身力士として史上初の幕下15枚目付け出しの資格を持つ。検査に合格すれば興行ビザが下りる来年初場所で初土俵を踏む。
ゲルと呼ばれる移動式住居に住んでいたが、その中にテレビを置いて相撲の生中継を見ていた。好きな力士は白鵬。当時は羊とヤギを300頭、馬を50頭放牧しながら生活。羊は一頭7000円で売れるという。「4つの季節があるので、(アルハンガイ県の)バットツェンゲル郡内を年に4回移動します。1回の移動は7キロ。首都のウランバートルには5回か6回しか行ったことがない。遠いから」と素朴な笑みを浮かべる。
「13歳からたき火のための丸太をトラックに積んだり、お茶をつくる水を運んだりしていた」という肉体は怪物級。まったく経験のない相撲で、高校時代は5冠を獲得した。
幕下15枚目で全勝すれば所要1場所の十両昇進もありえる。初めて日本に来たとき「モンゴルはいつも風が吹いているのに、日本は風がなくて困った」という大草原育ちが、国技館にモンゴルの風を巻き起こす。(岸本隆)
▼アルタンホヤグ・イチンノロブ 1993年4月7日、モンゴル・アルハンガイ県バットツェンゲル郡出身の20歳。190センチ、183キロ。バットツェンゲル高までモンゴル相撲と柔道の経験が数カ月間あるだけ。高校を中退し10年3月に鳥取城北高入学。得意は右四つ、寄り。家族は両親、妹。弟。
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