10回表の攻撃を終え、ベンチ前で喜ぶ(手前左から)ジョーンズ、銀次ら楽天ナイン=東京ドーム
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◇日本シリーズ第5戦 楽天4−2巨人
王手だ。仙台で胴上げだ。コナミ日本シリーズ2013は31日、東京ドームで巨人(セ・リーグ)−楽天(パ・リーグ)の第5戦があり、楽天が4−2で勝ち、対戦成績を3勝2敗、球団創設9年目で初の日本一まであと1勝とした。試合は延長戦に突入も10回、銀次内野手(25)、アンドリュー・ジョーンズ外野手(36)の適時打で2点勝ち越し。その裏、6回から救援の則本昂大投手(22)が無失点でしのいだ。シリーズは11月1日の移動日を挟み、2日の第6戦からKスタ宮城に舞台を戻す。
祈りが通じた。激闘を制した。ついにイヌワシ軍団が日本一に王手をかけた。6回から登板した則本にすべてを預け、延長10回に決着。5イニングを投げきった右腕は天を仰ぎ、コブシを握る。星野監督の目には涙があふれた。
「こんなにしびれた試合はない。うれしいね、本当に。涙が出てきちゃう!」。お立ち台で声が震える。4度目の日本シリーズ。そして、「永遠のライバル」との頂上決戦。試合中、ベンチでは両手を合わせ、勝利を祈る闘将の姿があった。手塩にかけて育てたチルドレンが、巨人を土俵際に追い込んでくれた。
勝負手だった。2点リードの6回。マウンドに上がったのは、中4日の則本だった。村田にソロを浴び、9回にも村田の強烈な投ゴロが右腕を襲い、土壇場で追い付かれた。ここまでか−。しかし、指揮官は今季15勝を挙げたルーキー右腕に試合を託した。
続投だ。「最後まで行け! 自分で責任を取ってこい」。10回の攻撃。先頭打者として則本が打席に立ち、四球を選ぶ。闘将の執念がセ王者の守護神を追い詰める。1死一、二塁。フルカウントから走者がスタートを切った。「あれは勝負」と指揮官。銀次の中前打で決勝のホームを踏んだ則本は、その裏を3人で締めた。
第7戦の先発が消える79球。すべてを出し切ったルーキーは「早く寝たいです」と息を吐いた。「投げられるところまで投げるつもりでした。全力を出し切りました。信頼して、後ろで使ってもらえている。すごくうれしいし、期待に応えたかった」
勝利を追及するだけが指揮官の仕事ではない。「監督というのは、脚本を書き、演出もして、役者にもならないといけないんや」。最高の舞台をつくり、観客を魅了するのもプロの責任。星野監督の信念は、大一番でも変わらなかった。
闘将の気迫がイヌワシ戦士に乗り移り、大一番を制した。さあ、王手をかけ、舞台は仙台へ。第6戦を託すのは、絶対エースの田中だ。「ここまでの舞台をみんなでつくった。大いに力を発揮してもらえばいい」。日本一は、もう目の前。球団創設9年。新参球団が巨人を追い詰めた。 (井上学)
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