4年前との違いはもう一つある。当時は同じ五輪出場枠「3」を争っていても、男子は上位3人の出来がずばぬけていた。けが明けの高橋であっても、よほどのことがない限り3位を下回ることはなかった。
■いざ注目され、追い上げられると…
今回はバンクーバー五輪代表の高橋、小塚崇彦(トヨタ自動車)、織田信成(関大大学院)に加え、GPスケートアメリカ優勝の町田樹(関大)、昨季全日本王者の羽生結弦(ANA)、無良崇人(岡山国際スケートリンク)……と強豪ぞろい。女子以上のハイレベルな代表争いが繰り広げられている。
「いつも女子ばっかり注目される」とぼやいていた高橋。3年前には、下から追い上げられるのも「それほど嫌じゃないかも」と答えていた。しかし、いざ自分が望んでいた状況が訪れてみると……。
「そうなんですよ。スケート界にとってはいいことです。でも、実際そういう立場になるときつい。注目はうれしいけれど、僕は今、それに耐えられる自信がない」。こうしたネガティブな言葉を口にしながらも、その状況を受け入れ、前向きに変われるのが高橋の良さでもある。
感性や勘が鋭い「感覚人間」の高橋は、モチベーションが上がればおそらく日本人選手で最も力を出すタイプだろう。今はそれがないと知り、その理由が分かったことが、スケートアメリカの大きな収穫といえる。
■コーチの愛のムチにどう応えるか
「毎試合、いい演技ができるわけじゃない」。そう考えるゆえ、モロゾフコーチは「スケートアメリカの欠場を提案してきた」と高橋。「だけど僕、試合に出続けるのは慣れているけれど、長い間試合に出ないでいきなり出るのは慣れてないから」
結局、無理して出場し、モロゾフコーチの愛のムチをもらうことができた。「ニコライはすごく今、大輔に集中してくれている。それはうれしいはずよ」と長光コーチ。愛のムチに高橋がどう応えるか。長光コーチをはじめ「チーム大輔」の面々は、高橋の出す答えを静かに見守っている。
(原真子)
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