「若年無業者白書」に見る、クラウドファンディングを利用した「調査」の実施

2013/11/01


先日「若年無業者白書」の出版記念イベントに参加してきました。貴重なトークの内容はこちらでまとめております。

「若年無業者白書」出版記念イベント #sodateage (10/27) – Togetter


クラウドファンディングで調査を実施

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「若年無業者白書」については、すでに上がっているダイヤモンド・オンラインの記事(何が「若年無業」を長期化させるのか 民間初の『白書』で明らかに)が詳しいので、こちらをご参照ください。この記事ではその内容というより、本白書がクラウドファンディングを用いて実施されたことについて考えていきます。


「若年無業者白書」が発行された問題意識のひとつは、「若者支援」に対する調査、エビデンスの不足。少ないながらも国内では若者無業者(ニート、ひきこもりなど)の支援は行われていますが、現場のデータは公開されておらず、各団体の「暗黙知」に留まっています。

「若者支援」については、学術的な研究も十分ではありません。ここ最近は、人文系の調査は研究費を獲得しにくいとか。

「調査を行い、レポートを高額で販売する」というビジネス的アプローチもあり得ますが、調査としてはかなりニッチなので、ビジネス化も困難です。


しかしながら、その「暗黙知データ」には多大な価値があります。データが共有されれば、より適切な支援が可能になり、政策立案の際にも役立つはずです。

そういった目で社会を見てみると、若者支援にかぎらず「調査を行う社会的意義はあるけれど、調査費が出ない、またはビジネスとして成り立たないがために、実施されていない調査」が多数存在することに気づかされます。


前置きが長くなりましたが、はい、そこでクラウドファンディングです。税金でも無理、ビジネスでも無理なら、共感する人から善意のお金を集めればいいのです。

そんなアプローチ、うまくいくの?と疑問に思う方も多いかもしれません。驚くなかれ、「若者無業者白書」のファンディングはわずか8時間で目標達成していますクラウドファンディングと評価経済—評価を換金するインフラとして)。

目標額の達成後も支援は集まりつづけ、最終的に108人の方から89.8万円の資金が集められました。追加の資金は「若者無業者白書」の翻訳版の発行、啓発イベントの実施、白書クオリティの向上などに充てられた/充てられるとのことです。


同種の事例では自殺問題に取り組むライフリンクが、同じくクラウドファンディングサービスの「Readyfor?」を用いて60万円超の資金を集めています。

「就活自殺」増加の背景に迫る「就職活動に関わる意識調査」(清水康之) – READYFOR?


繰り返しですが、「調査費の助成も出ない、ビジネスにもならない、でも社会的意義のある調査」は多数存在します。ぼくがビッグイシュー・オンラインで関わっているホームレス問題に関しても、まだまだその全貌は明らかにされていません。「女性ホームレス」の実態などはその一つですね。

海外では「Microryza」「Petridish」「Spot.us」など、調査とその報道を支援することに特化したクラウドファンディングサイトが複数立ち上がっています。日本でも盛上げていきたい流れです。


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