仏像の盗難被害を受けた対馬市の関係者からは韓国政府に対し、「一日も早く返還の手続きに入るべきだ」との声が上がった。
同市豊玉町小綱の観音寺から奪われた観世音菩薩坐像は、韓国の浮石寺(プソクサ)が「日本の倭寇(わこう)から盗まれた」と所有権を主張し、韓国の大田地裁に提訴。同地裁は返還を差し止める仮処分を決定し、返還の見通しは立っていない。
判決を聞いた観音寺の田中節孝前住職(67)は「裁判自体が返還を遅らせる時間稼ぎで、むなしさを感じる。韓国政府は盗品を元に戻す当然の対応をすべきだ」と訴えた。坐像は観音寺の本尊で、地域住民の心のよりどころとして大切に守られていた。寺を管理する総代家系の村瀬辰馬さん(59)は「住民の悲しみは続いている。(窃盗犯は)上告せず、一日も早く仏像を返してもらいたい」と求めた。