クローズアップ2013:JR北、遠い経営基盤強化 安全管理、JR東幹部受け入れ 広いエリア・雪や凍結、特殊事情足かせ
毎日新聞 2013年10月31日 東京朝刊
車両やレールの不備が相次ぎ、安全管理の問題が深刻化していたJR北海道が11月1日から、JR東日本の幹部社員を受け入れ、安全管理部門の抜本的な強化を目指す。国土交通省が狙う、JR北海道の経営刷新策がようやく動き出すことになった。だが、トラブル続出の背景には、JR北海道の経営基盤の弱さがある。人の派遣だけで鉄路は再生できるのか。分割・民営化でJR北海道を作った国の対応も問われそうだ。
◇基金で「延命」
「経営的に潤沢な予算が組めない現状があった。結果的に現場の声を軽視していた」。JR北海道の萩原国彦経営企画部長は、国土交通省から2度目の改善指示を受けた25日夜、札幌市内での記者会見で、資金難で安全対策がおろそかになっていたことを認めた。問題の根幹には、整備や補修に十分な資金を回せないほどの経営基盤の弱さがある。鉄道の営業距離は2500キロとJR九州より1割長いが、区域内の人口は逆に6割も少ない。しかも、冬季の積雪や凍結で、線路や列車の維持管理により多くのコストがかかっている。
JR東日本、東海、西日本の上場3社の2013年3月期の連結決算は増収増益で、すべて最終黒字だった。しかし、JR北の鉄道事業は売り上げ約780億円に対し、経費は約1110億円と、約335億円の赤字。1987年の旧国鉄の分割・民営化で誕生して以来、赤字基調が続き、「純粋な民間企業なら経営破綻してもおかしくない」(金融機関幹部)状況だ。
それでも同社がつぶれないのは、「経営安定基金」という支援を国が用意したからだ。JR北海道向けには6822億円を運用し、その利益で赤字を穴埋めしてきた。しかし、年間500億円程度あった運用益は金利低下で、半分にまで縮小。12年度の運用益は約254億円で、関連事業なども合わせてようやく9億8600万円の黒字を確保。335億円の鉄道事業の赤字をなんとかカバーした。
3島会社のひとつであるJR九州は、鉄道事業の損失を博多駅ビル開発などのもうけで補填(ほてん)するなどして、公的支援に頼らない経営にかじを切っている。16年度までに、鉄道事業以外の売上高を全体の6割以上にする計画だ。しかし、JR北はエリアが広く、人口も少ないため、「慢性赤字→設備投資圧縮→事故多発→不信拡大→一層の業績悪化」という負の循環から抜け出せる兆しは見えていない。