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特集 TPP問題

 TPP交渉は地下に潜り、分散し加速している。年内妥結を目指す米国や日本を含む、TPP参加12ヶ国は、12月の閣僚会合に向けてそれぞれの分野ごとに世界各地で中間会合を開催している。10月24~28日、東京都内で5日間にわたり「知的財産分野」の会合が行われた。先進国と新興国の利害が対立し、最も論点の多い同分野において、日本は今回初めて議長国となり、議論のまとめ役を担った。

 28日、千代田区三番町共用会議所で行われた記者会見で、大江博首席交渉官代理は「結論として、非常に順調に、成功裏に終わったと思っている」と強調した。

 しかし、「順調にというのは、最も論点の多い知財分野において、今回の会合で、これまで議論されていなかったものを含め、すべての論点を議論できた。次への見晴らしがよくなったという意味だ」と補足した。大江代理はこれをもって「当初の目的は達成できた」と語るが、医薬品の特許やデータ保護期間をめぐっては、10年に延長したい米国とこれに反発する新興国の溝は埋まっていない模様だ。

 大江代理は「年代妥結を目指し、作業を加速させていく」と意気込みを見せるが、現在のところ次の中間会合の開催地は未定。12月の閣僚会合までに開催し、各国の合意点を調整していく。

■日本の議長国としての役回り 「感謝されている」

 質疑で、日本が議長国としてどのような役割を果たせたのか問われた大江代理は、「交渉団は3年間、1年の半分くらい交渉している。その分マンネリ化するでしょうから、日本に来たこと自体が彼らにとっては新鮮であっただろうし、多くの交渉官から感謝された」と述べた。

 さらに、「負担の大きい分野で日本が手を上げたのは、各国の大使館からの報告をみると、高い評価を受けている。かなり存在感を示せたということ」と自信をみせたが、日本が会合でどのような要求を示したか、どう主導権を発揮したかについては言及はなかった。

■日米並行協議とは「連携できていない」

 「知的財産分野」は、TPPと並行して行われている、米国との二国間協議(日米並行協議)でも交渉のテーマとなっている。「知財」を含めて、米国にとって投資をする上で弊害となる様々な規制について議論する交渉であり、TPPと並び、日本の生活・国益に大きな影響を与える。

 並行協議は「TPPに関連するため、TPPの守秘契約に含まれる」という理屈から、交渉を主導する外務省は内容をほとんど開示していないことも問題視されている。TPP政府対策本部は「知財」の議長国として、この並行協議とも連携して、整合性を取りながら交渉していく必要がある。

 このことについて、IWJの質問に対し大江代理は、「並行協議でも『知財』は対象になっているが、まだ協議の内容まで連携するところまではいっていない」と答えた。

 さらに、大江代理はどの程度並行協議の内容を把握しているのか、という質問に対しては、「日米並行協議は我々内閣官房のTPP政府対策本部がやっているのではなく、外務省がやっている。我々は終わったあとに報告を受けてはいるが、交渉自身に内閣官房は参加していない」と明かした。(IWJ・佐々木隼也)

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