NSA盗聴問題:米情報長官認める「同盟国首脳も対象」
毎日新聞 2013年10月30日 11時09分(最終更新 10月30日 13時55分)
【ワシントン白戸圭一】米国家安全保障局(NSA)がメルケル独首相ら35人の外国首脳の電話などを盗聴していたとされる問題で、米国のクラッパー国家情報長官は29日、下院情報特別委員会の公聴会で証言した。クラッパー長官は「首脳の意向を収集、分析することは基本的な信条のようなものだ」と述べ、NSAによる同盟国の首脳を対象にした情報収集活動が長年にわたって行われてきたことを認めた。
クラッパー長官は「情報機関に入って最初に学ぶ基本は、指導者の考えをどう知るかということだ。どんな指導者でも対象になる」と明言。通信傍受の目的について「外国首脳の発言が実際に起きていることと符合するかを確認するため」と述べ、同盟国を含む外国首脳の通信を傍受していたことを認めた。ただ、盗聴を含む情報収集活動の対象としてきた首脳の名前は明らかにしなかった。
米国内には、必要があれば同盟国首脳に対する盗聴も実施すべきだとの意見もあり、下院情報委員会のロジャース委員長(共和)は公聴会の冒頭に「全ての国家は外国の情報を収集している」と発言。クラッパー長官と同席したNSAトップのアレグザンダー局長(陸軍大将)は「攻撃されることで情報収集プログラムを断念することよりも、国を守ることが重要」と述べ、欧州の同盟国も米国の指導者に対するスパイ活動を行っているはずだと主張した。
また、フランス、スペイン、イタリアのメディアがNSAによる欧州の一般市民の電話盗聴について報道したことに対し、アレグザンダー局長は「完全な誤り」と反論。「それらの情報は米国が集めたのではなく、欧州の同盟国が中心になって集めた」と述べ、報道内容を否定した。