天安門車両突入:「恐怖で体動かず」被害者語る
毎日新聞 2013年10月30日 15時00分(最終更新 10月30日 19時12分)
【北京・工藤哲】「突進してくる車を見て、怖くて体が動かなくなった」。中国・北京中心部の天安門前に車両が突入した事件で、負傷した観光客らが毎日新聞の取材に応じ、当時の様子を生々しく語った。毛沢東の肖像画が掲げられた天安門城楼は中国有数の名所だが、初めての訪問が無差別の凶行によって台無しにされたケースも少なくなかった。
北京市順義区の王大革(おう・だいかく)さん(26)と妻呉麗華(ご・れいか)さん(27)は夫婦で天安門を見学中、事件に巻き込まれた。
夫婦は、スポーツタイプ多目的車が天安門城楼前の歩道に入り込んできたのを目撃した。当時、歩道には大勢の観光客がいて、一斉に「ワー」という悲鳴が上がった。王さんは恐怖で体が固まってしまった。観光客らが方々に逃げ出すと、車はその後を追うようにして突進し、王さんは難を逃れた。だが、呉さんは騒動に巻きこまれて足に重傷を負い、病院で集中治療を受けている。医師からは「切断する必要があるかもしれない」と通告されたという。
「車は肖像画近くの金水橋の柵に衝突し、一気に燃え上がった。車内にガソリンをまいていたのかと思わせるほどの勢いだった」。王さんは声を震わせた。
天津市に住む孫中福さん(58)は、一家で観光に訪れていた。初めての天安門で、一家は楽しみにしていたという。娘によると、孫さんは車が突入した付近にいたため重傷を負った。娘は「ものすごい音がした。大勢の人がはね飛ばされていた」と振り返った。
東北部・黒竜江省の柳樹霞さんは、親戚の結婚式に出席するため北京を訪れていた。天安門に来たことがなかったので、見学に来たところ事件に遭遇し、重傷を負った。柳さんの夫は「ともかく現場は混乱していた。人があまりにも多く、何が起こったのかはっきり分からなかった」とぼうぜんとしていた。