天安門車両突入:ウイグルの村厳戒 抑圧強化に住民不安
毎日新聞 2013年10月30日 22時42分(最終更新 10月31日 03時05分)
【トルファン(中国新疆ウイグル自治区)隅俊之】中国・北京中心部の天安門前で起きた車両突入テロ事件で、ウイグル族の容疑者が住んでいたとみられる新疆ウイグル自治区東部のトルファン地区ピチャン県に30日、入った。容疑者の戸籍住所とされる同地区ルクチュンに入る道は公安当局により封鎖され、厳戒態勢が敷かれている。現地では漢族支配に対する根強い反発がある一方で、止まらぬ暴力の連鎖を懸念する声も漏れている。
「別の場所へ行け。理由は聞くな」。自治区政府があるウルムチから車で約3時間。「西遊記」でも有名な火焔山にほど近いルクチュンに向かう道に入ると、銃を構えた警察官らに制止された。周辺からの道は少なくとも3本あるが、すべてが封鎖されていた。隣接する集落のウイグル族の男性(52)は「6月に事件があってから地元の人も身分証を見せなければ入れないんだ」と声を潜めた。
ルクチュンでは6月下旬、警官隊とウイグル族の衝突で35人が死亡。今回の事件と関係する可能性もある。
トルファン地区の公安局や高速道路の休憩所には、過去のテロ事件に関与したと当局がみているウイグル族の手配写真が何枚も張られていた。北京での事件を受け、当局は締め付けを強化している模様だ。ルクチュンに住むウイグル族の女性は電話取材に「警察官があちこちにいる。協力者をあぶり出すために盗聴されているかもしれないからこれ以上話すのは危険だ」と慌てて通話を切った。
新疆ウイグル自治区では、1955年に自治区ができて以降、多くの漢民族が流入し、人口約2100万人のうちウイグル族が半分以下に減少。就職の機会の差別などが指摘され、イスラム教を信仰するウイグル族への宗教的圧力も強まる。
ルクチュンに隣接する集落のウイグル族男性によると、地元当局はイスラム教徒の男性に多いひげをそるように強要。女性が頭髪をスカーフで隠すのは認めているが、顔を隠すのは禁じているという。また、国有企業に勤めるウイグル族はモスク(イスラム礼拝所)に行くことも禁止されているそうだ。男性は「漢族がウイグル族を殴っても何も言われないがウイグル族が漢族を殴ると問題になる。ウイグル族への政策は誤っている」と訴えた。