元徴用工訴訟:1日判決、原告勝訴なら日韓政府に難題
毎日新聞 2013年10月31日 11時18分(最終更新 10月31日 12時19分)
【ソウル大貫智子】日本の植民地時代に韓国人労働者が日本企業に徴用されていた問題で、韓国の元女子勤労挺身(ていしん)隊員らが三菱重工に対し未払い賃金支払いなどを求めた訴訟の判決が1日、韓国・光州地裁で言い渡される。元労働者の個人請求権を初めて認めた韓国最高裁の司法判断(2012年5月)後、損害賠償を求めて相次いで提訴された訴訟の最初の判決で、原告が勝訴すればさらに提訴の動きが活発化する可能性がある。日韓両政府は頭を抱えるが、解決策は見いだせないままだ。
原告側弁護団によると、元労働者をめぐる韓国内の係争中の訴訟は6件。今回の訴訟は昨年10月に提訴され、その後、元労働者らが富山市の機械メーカー「不二越」や、新日鉄住金にそれぞれ損害賠償を求める訴訟が相次いでいる。7日にはソウル地裁で不二越に対する訴訟の初公判が開かれる。
発端は昨年5月の最高裁判決。三菱重工と新日鉄(当時)の2社に対し、韓国側が個人請求権を放棄することで合意した日韓請求権協定(1965年)では、個人請求権は消滅していないとの判断を初めて示した。差し戻し審はいずれも7月、企業側に賠償を命じる判決を出し、両社とも最高裁に上告中だ。
賠償判決が確定すれば、日本企業や日韓両政府に与える影響は大きい。韓国政府が12年にまとめた調査では、植民地時代に動員に関与した日本企業は計299社。原告側弁護団によると、訴訟対象者は約20万人に上るという。日立製作所や日産自動車などの重工業など各業種の大手企業が多数含まれており、訴訟が広がれば「韓国への投資のカントリーリスクになる」(日韓外交筋)との懸念も出ている。
日本側には、最高裁判決確定前に韓国政府が対応すべきだとの声が強いが、韓国青瓦台(大統領府)高官は「司法に先立って行政が動けば、司法への干渉となる」と話し、立場を曖昧にしたままだ。
韓国政府は元労働者に対する支援財団を12月にも設立予定で、請求権協定に基づき日本が供与した経済協力金を受け取った韓国の鉄鋼大手ポスコなどが寄付を検討中。しかし原告側弁護団はあくまで日本側の参加を求め、両政府や両国企業による財団設立を提案している。