フクロネコ科 Dasyuridae |
アメリカ産のオポッサム類、バンディクート類、フクロオオカミ、フクロアリクイおよびフクロネコ類を含めて、多種多様な有袋類が動物の肉を食べる。オーストラリアとニューギニアでは、肉食性有袋類の大部分はフクロネコ科のものである。フクロネコ科は地上の主だった生息環境のすべてにみられる。 フクロネコ科の大部分の種は小型で、ハツカネズミのような姿をしている。50%以上の種は成獣でも100g未満で、最小に近い哺乳類のいくつかも含まれる。有名なタスマニアデビルはフクロネコ科のうちでは大型(6〜8kg)である。 大部分の小型有胎盤類は1繁殖期に2度以上排卵し、ふつうは2度以上出産する。多くのフクロネコ類もこれと同様のパターンを持つ。たとえば、オブトスミントプシスはオーストラリアでは冬のまっただ中の7月と夏の1月〜2月に繁殖する。メスは普通この期間に、10月以前と以後との2回出産する。妊娠期間は12〜13日ぐらいで、有袋類としても短い。仔は最初のうちは育児嚢の中で、のちには空洞になった丸太の中や石の下に草で作られた巣の中で授乳される。授乳期間は60〜70日である。若いオブトスミントプシスは有袋類にしては急速に成熟し、生後6か月で繁殖できる。にもかかわらず、生まれた年の繁殖期には繁殖せずに、次の繁殖期に繁殖する。生後18か月以上生きる個体は、いたとしてもごくわずかで、したがって2回目以降の繁殖期には繁殖しない。 繁殖に関しては、フクロネコ科は他にもいくつかの特徴を持つ。タスマニアデビルなどの大型のフクロネコ科は1年に1回しか出産しない。おそらく、大型の哺乳類は仔を育てるのに長い時間を要し、とくに有袋類ではその傾向がある。この場合、1繁殖期に2度以上排卵できるという能力のため、一腹の仔が死亡した時にも、別の一腹の仔で埋め合わせる機会を与えられることになる。 一方、1年に1回しか出産できない小型のフクロネコ類は2つのグループに分けられる。オス・メスともに2年渡って繁殖する種と第1回の繁殖期が終わるとオスがみな死んでしまう種がある。前者は砂漠周辺を生息環境とし、1回に10頭もの仔を産み育てる。少数づつ2回出産するより1回に多く産むほうを選択している。後者は森林を生息地とするため、一腹の仔をうまく育て上げる可能性が大きいが、この生育環境では、餌である昆虫の量が季節によって大きく変動することと、一腹の仔を育てるのに長時間を要することから考えて、1年に1腹を育てることに専念してきたのであろう。オスが2回目の繁殖期がくるまでに死んでしまうことに対しての説明としては、最初の短い繁殖期にできるだけ多くの仔を残すためにあちらこちらに出歩き、この努力の報いとして、突然死んでしまうといわれている。 チャアンテキヌスでは、オスの死因は胃潰瘍や腸潰瘍を含むいろいろな病気の結果であると思われている。これはオスが繁殖期にひどいストレスを受けることを示している。最近になって、オスのストレス反応は繁殖動物としては利点であり、それによって彼らは摂食を断念してメスを見つけだし、交尾することに専念できるのだということが明らかになってきた。したがってストレスを受けることは、より多くのメスと交尾し、多くの仔の父親となることができる点では有利であるが、同時に病気にかかりやすくなるのだ。 |