2013年10月24日12時34分
長期かつ大規模で、悪質――。農林水産省がこう指摘した米穀販売会社「三瀧(み・たき)商事」(三重県四日市市)による米の産地偽装。三重県警は24日、同社などの強制捜査に踏み切った。誰が、どのようにかかわったのか。事実の究明は司直の手に委ねられた。相次ぐ産地偽装の発覚に、食品への信頼が揺れている。
●ロンダリングにメス
三瀧商事の隠蔽(いんぺい)工作は、犯罪組織が不正に得た資金を、金融機関の口座を転々とさせることで正当な資金に見せかける資金洗浄(マネーロンダリング)のような手口だった。
工作には、子会社のミタキライス(四日市市)のほか、全国穀類工業協同組合(東京都台東区)の三重県支部や取引先など5業者・団体が加担した。伝票上の操作で、これらの加担先に外国産米や加工用米を販売し、同量の国産米を買い戻すなどしたように装っていた。実際に米のやりとりはない架空取引だった。
三重県は昨年3月、ミタキライスに定期の検査に入ったが、伝票上問題がなかったため偽装に気づけなかった。県幹部の一人は「極めて複雑で巧妙な手口で、通常の伝票調査で見抜くには限界があった。かなり悪質な事案なので、司直の力でただしてもらいたい」と話した。
しかし、農林水産省に内部告発があったとみられ、同省東海農政局は8月28日に臨時検査に着手。調査は約1カ月に及び、不正をつかんだ。
三瀧商事の管理部長(55)は取材に、偽装を主導していたとし、「作業にあたった数人が知っていた」と話した。その一方で、服部(はっとり)洋子社長の関与など会社ぐるみの偽装を否定した。
農水省は11月5日までに原因や責任の所在を明らかにした改善報告書を提出するよう三瀧商事に求めている。だが、同社と子会社ミタキライスは11日、農水省や三重県に相談しないまま、会社を解散し清算するとしたファクス1枚を報道機関に送付。現在、手続き中だ。
今回の捜索による資料の押収などで同社が報告書をまとめるのは難しくなるおそれもある。農水省には、提出できないという連絡はいまのところ入っていないという。
服部社長は四日市商工会議所の女性部会長を長年務め、2010年度に四日市市の産業功労者表彰を受けている。問題発覚後、「消費者、取引先、関係者の皆様に心よりおわび申し上げます」との談話を発表したが、体調を崩したとし、公の場に姿を見せていない。
東海農政局の担当者は「社長が本当に偽装を知らなかったのか。誰が何を目的にどういう指示を出していたのか。会社が記者会見を開くなどして説明することが必要だ」と指摘する。
●捜査員40人続々本社へ
三重県四日市市広永町にある三瀧商事本社では、午前7時半ごろから従業員の出入りが始まった。午前9時ごろ、三重県警の捜査車両10台とトラック1台が到着。約40人の捜査員らが次々と家宅捜索に入った。
男性従業員は取材に、捜索について「我々はただの従業員だから関係ない」と話した。捜索が始まっても、会社の倉庫ではフォークリフトが動き回り、工場からは機械の稼働する音が聞こえた。
偽装に加担した四日市市内の製茶会社も捜索を受けた。元社長(70)は、いつも通り午前7時半ごろから30分ほど、会社近くの通学路に立って子どもたちの登校を見守った。「逃げることはしない。(刑事処分も)覚悟している。お客さんが離れないといいんだけど……。でも、うちで働いてくれる従業員さんは守らないといけない」と話した。
●「徹底的に解明を」
三瀧商事の偽装米はフジパングループ(名古屋市)を通じ、流通大手イオンなどに弁当やおにぎりとして卸されていた。
フジパングループで弁当などを製造する日本デリカフレッシュの白鳥正幸・品質管理部長は、三重県警の家宅捜索について「全容が解明され、二度とこのようなことが起きないようにしていただきたい。我々も食の安全にしっかり取り組んでいきたい」と話した。宅配弁当に偽装米が使われていた大阪よどがわ市民生協(大阪府吹田市)の北薗徹夫・人事総務部長は「偽装を見抜けなかった責任を痛感している。なぜ偽装が行われたのか、解明を期待する」と述べた。
消費者からも真相究明を求める声が上がった。24日午前、名古屋市千種区のイオン系列のスーパーに買い物に来ていた同市東区の60代の無職女性は「イオンの弁当はたまに買っていたが、問題が発覚してから、しばらく買うのを控えていた。イオンも気の毒で、二度と起きてほしくない問題。徹底的に調べて欲しい」と話した。
朝日新聞名古屋編集局
朝日新聞・東海政界
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