【読売】 2012/12/12夕刊1面トップ「北ミサイル発射 沖縄西方を通過 自衛隊迎撃措置取らず」【朝日】 2012/12/12夕刊1面トップ「北朝鮮、ミサイル発射 フィリピン沖に落下 『軌道進入に成功』と発表」 【毎日】 2012/12/12夕刊1面トップ「北朝鮮ミサイル発射 国内に被害なし フィリピン沖落下」【産経】 2012/12/12号外「北ミサイル発射 沖縄上空通過、比沖に落下か」
《注意報1》 2012/12/16
主要各紙は、12月12日、「北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射した」と報じました。しかし、海外メディアは、原則的に「ロケット」(韓国紙は「로켓」、英米紙は「rocket」、中国紙は「火箭」)と表記しています(ただし、一部の記事では「ミサイル」と表記しています)。
■North Koreans Launch Rocket in Defiant Act(New York Times 2012/12/11)
■北ロケット電撃発射に韓国政府が当惑(中央日報 ・日本版2012/12/12)
一般的に、「ミサイル」は「ロケットあるいはジェット推進による飛翔爆弾」(大辞林)をいい、爆発物を搭載した軍事兵器を指す言葉です。毎日新聞も12月12日付夕刊の用語解説記事で、「ミサイルと人工衛星」の違いについて「先端の搭載物が弾頭か衛星かの違い」と説明しています。
弾道ミサイルも人工衛星も、ロケットエンジンを使って飛ばす技術・構造は基本的に同じで、先端の搭載物が弾頭か衛星かの違い。見分けるには落下物などで確認する必要があり、断定するのは困難。日米両政府などは軌道上の人工衛星の有無などで判断している。北朝鮮に対しては、09年の国連安保理決議で弾道ミサイル技術を使用したすべての発射中止を求めており、日米韓などはいずれにせよ安保理決議違反と批判している。
(毎日新聞2012年12月12日付夕刊1面)
産経新聞によると、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のレーダー追跡データを公開している米政府のサイトに、北朝鮮が発射し、軌道上で周回している物体が「北朝鮮の人工衛星」と登録されたとのことです。(*)
■サイトに「衛星」と登録 北朝鮮打ち上げで米政府(MSN産経ニュース 2012/12/14 18:00)
しかし、日本のメディアは、搭載物が弾頭か衛星か区別することなく、「ミサイル」という用語を使っています(NHKは「”ミサイル”」と表記)。そのため、北朝鮮が発射したのは、本当に軍事兵器としてのミサイルだったとの誤解を与える可能性があります。
なお、日本、米国、韓国の各国政府は、公式に「ミサイル」と表記していますが、爆弾・爆発物が搭載されていたという説明はなされていません。
■北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射に関する情報について(日本政府首相官邸)
■北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射に関する情報(日本政府外務省)
■Statement from NSC Spokesman Tommy Vietor on North Korea’s Missile Launch(米国家安全保障会議局報道官声明:ホワイトハウス)
■The ROK government’s statement on North Korea’s missile launch(韓国政府統一省声明)
(*)北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)は、「北朝鮮のミサイル」(North Korean Missile)と表記しています(NORAD acknowledges missile launch 2012/12/11)。
(**) 国連安保理決議第1874号には「北朝鮮に対し、いかなる核実験又は弾道ミサイル技術を使用した発射もこれ以上実施しないことを要求する」(Demands that the DPRK not conduct any further nuclear test or any launch using ballistic missile technology)との規定があります。人工衛星を載せたロケットであっても、「弾道ミサイル技術を使用した発射」であれば、この国連安保理決議に違反するとみられます。