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【政治】

猛進 重なる姿 秘密保護法案 安倍政権 スパイ防止法案 中曽根政権

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 安倍政権は、機密情報を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法案を、今国会で成立させようという姿勢を強めている。与党が衆参両院で多数を占め、政権が安定した状況で国民の「知る権利」の制限につながる立法に走る姿は、一九八〇年代にスパイ防止法案の成立を目指した中曽根政権の時代と重なる。 (清水俊介)

 スパイ防止法案は、八〇年に起きた自衛官の機密漏えい事件をきっかけに、自民党が法制化の議論に着手。中曽根政権誕生後の八五年に国会提出した。防衛と外交の機密情報を「国家機密」に指定し、公務員らが外国の勢力に漏らせば、罰則は最高で死刑という厳しい内容だった。

 秘密保護法案も、政府が外交や防衛など四分野の情報を「特定秘密」に指定する内容。漏えいには最高で懲役十年の厳罰を科す点で似ている。政府側の裁量で際限なく秘密が広がる恐れがあることなど国民の「知る権利」を侵すのも同じだ。

 スパイ防止法案は成立しなかった。世論や野党の反発に加え、自民党内の慎重論も強く、実質審議されずに廃案になった。

 自民党は八六年の衆参同日選で圧勝したことを受け、最高刑を死刑から無期懲役に変更し、報道への配慮規定も追加した修正案の再提出を目指した。だが、若手議員だった谷垣禎一法相、大島理森(ただもり)前自民党副総裁ら十二人が反対の意見書を党に提出。谷垣氏は反対の論文も発表し、自民党は再提出を断念した。

 秘密保護法案をめぐっては、多くの法学者が反対の声を上げたスパイ防止法案の時と同じように、世論の反対論は広がりつつある。二十八日には二百六十人を超える法学者が反対声明を発表。報道機関の世論調査でも反対が半数を超える。

 しかし、自民党内に慎重論は広がらない。八六年の意見書に名を連ねた村上誠一郎衆院議員は党が法案を了承する際、反対を主張したが、谷垣氏は法案の閣議決定で署名。「当時は情報公開の仕組みが整備されていなかった。当時と変わってきた」と釈明した。

 学習院大学の野中尚人教授(比較政治学)は「自民党は長く国民政党として、保守からリベラルまで国民の幅広い意見を受け止めていた。野党転落後は右傾化し、リベラル層の居場所がなくなっている。秘密保護法案の対応は党の現状を反映している」と指摘する。

◆谷垣論文の骨子

 谷垣禎一現法相が「中央公論」一九八七年四月号に執筆した論文の骨子は次の通り。

▽自由と民主主義に基づく国家体制を前提とする限り、国民が防衛情報を含む国政の情報にアクセスすることは自由であるのが原則

▽刑罰で秘密を守る場合は、秘密を限定しないと人の活動を萎縮させる。萎縮効果の積み重ねこそが自由な社会にとって一番問題

▽情報収集は国民の自由な活動に属する。処罰は本来のスパイ活動に限定すべきだ

 

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