育休給付:賃金の67%…厚労省が拡大案、男性の取得促す
毎日新聞 2013年10月29日 21時19分
厚生労働省は29日、育児休業中の人に休業前の賃金の50%を払う育児休業給付について、育休取得から半年間は給付率を67%(休業前賃金の3分の2相当)に引き上げる案を厚労相の諮問機関、労働政策審議会雇用保険部会に示した。収入減を理由に育休取得を控える男性に考えを改めてもらう狙いがある。ただし、男性の取得率(2012年度1.89%)を20年に13%へ向上させるという政府目標の達成につながるかには疑問も残る。
男性の育休取得率は0〜2%台で低迷し、12年度は前年度を0.74ポイント下回った。田村憲久厚労相は29日の記者会見で「男性も育児休業をとってぜひとも子育てに参加いただきたい」と述べ、給付率引き上げの目的が男性の育休取得促進にあることを強調した。
現在の育休給付は、子どもが原則1歳になるまで休業前賃金の50%を受け取れる。しかし、夫が主な稼ぎ手である例の多い日本では、その水準で男性が育休を取るのは難しい。男性の取得率が9割のノルウェーでは、46週間賃金の100%が保障される。その点今回の見直しでは、共働き夫婦がともに育休を取ると最長で半年ずつ、計1年間の割り増し給付となり、経済面では一定の支えとなる。
それでも課題は少なくない。08年の厚労省調査では、約3割の男性が育休取得を望みながら、08年度の取得率は1.23%にとどまった。同じ調査で女性は7割以上が育休を「取得しやすい」と答えたのに対し、共働き男性は8割以上が「取得しにくい」と回答した。
背景には、上司や同僚の理解が得にくく、とりわけ男性の場合は育休を取りたくとも言い出せない雰囲気が職場に残っている現状があるとみられる。29日の雇用保険部会でも、給付率アップに関し「どの程度効果が期待できるか、もう少し分析してみないと分からない」との意見も出た。
子育て政策に詳しい渥美由喜・東レ経営研究所研究部長は「所得保障(給付金)の引き上げ期間を6カ月に区切ることで、夫にも取得に経済的なインセンティブ(動機)をつけるなど、工夫している点は評価できる。ただし『なぜ男性が育休なのか』という価値観や、職場風土が変わらない限り、制度があっても使えない状況に大きな変化は期待できない」と指摘する。【山崎友記子、中島和哉】