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【コラム 月刊猪瀬直樹】

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2013年10月29日

◆甚大な被害が

 東京都伊豆大島のみなさんが台風26号による土石流で甚大な被害を受けた。41人の方が亡くなったか、今なお行方が分からない。心からお悔やみ申し上げ、都としてできることのすべてを、全力で実行している。

 15日の事実関係を少し整理する。都と気象庁が「土砂災害警戒情報」を発表して大島町にファクスしたのが午後6時5分。大雨警報の中で「土砂崩れの可能性がある」と、気象庁・都道府県が市町村に注意するのがこの情報だ。市町村長はこれを参考に避難勧告などを出すかどうか判断する。

 町ではファクスが流れたころ、職員は帰宅し始めていた。これまでの台風でもそうしていたように、午前2時に再集合して風雨に備える計画だった。町長は島根県隠岐の島町に出張中。教育長が職務代行者となり総務課長らが対応していたが、無人の役場でファクスはだれにも気づかれず、機械から吐き出された。

 都はファクスを流した後、町に何度か電話したが応答がなかったたため都の出先機関である大島支庁に「町の態勢を確認してほしい」と依頼した。そこで初めて、役場が無人だと知ったが「未明に再集合するのだから、態勢は取れている」と判断しファクスを把握しているかどうか確認しなかった。町がファクスに気づいたのは総務課長が登庁した午前0時だった。

 町職員は午前2時に13人が庁舎に配置についた。その40分後、元町神達地区の住宅が全壊、次々と土砂災害が起きて初めてのっぴきならない事態だと気づいた。

 確かに都が「届きましたか」と相手に聞く常識的な対応をしていれば情報を早く伝えられただろうし、都の防災担当者が重大な危機感を伝えられたとも思う。ただ、町はファクス確認後も避難勧告を出していないし職員の集合時間を早める措置も取っていない。何度も台風針路に当たってきた町にとって注意すべきは「雨、風と波」の意識が強かった。よもや土砂崩れが起きるとは思っていなかった。

 避難勧告の権限は、災害対策基本法で市区町村長にある。住民全員に「避難した方がよい」と発信するのは、人口8000人の小さな町で前例のない彼らには難しかったかもしれない。情報を持ち、専門家がいる都道府県が何らかの権限で指示する仕組みを考えないといけないのかもしれない。

◆迅速な見直し

 今回の事態を受けて僕は都内62の市区町村長、防災担当責任者全員の携帯電話を都の防災責任者とホットライン化した。避難勧告などの重要事項をトップ判断できるよう材料を都の専門家から直接伝えるためだ。僕だって携帯は3台持たされている。1台はサイレントモードにならない。自宅には防災用の無線機がある。

 もう一つ、都だけではできない見直しもある。今回、重大な災害が起きる可能性が著しく高い場合に発表される「特別警報」が気象庁から出なかった。今年8月末から運用が始まったばかりだが発表は沖縄と北海道を除き都道府県単位だからだ。こうした旧来型の分け方を早く見直し、もっと地域特性に応じて限定的に出せるようにしないといけない。災害は待ってくれない。 (作家、東京都知事)

 

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