広がる「BYOD」注意点は10月28日 20時31分
「BYOD」ということばをご存じでしょうか?「BringYourOwnDevice」=「自身の機器を持ち歩く」という意味で、私物のスマートフォンやタブレット端末などを使って仕事をするスタイルを指します。
ふだんから使っている自分の端末で仕事をするので利便性は高くなりますが、一方で運用のしかたを誤ると業務に関する情報が外部に漏れるリスクも高くなります。
BYODを導入する企業や個人は、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
(ネット報道部・千田周平)
BYODの注目はセキュリティ対策
「BYOD」向けサービスが注目を集める背景には、個人に普及が進むスマートフォンやタブレット端末を業務に活用することで経費削減や業務効率化につなげたいという企業側のねらいがあります。
今月(10月)、東京ビッグサイトで開かれた「ITproEXPO」では、「BYOD」に関するサービスの展示が目立ちました。
各社の売りのひとつはセキュリティ対策、万が一端末を無くしたときに情報の流出を防ぐ機能です。
例えば、離れたオフィスにあるパソコンを手元で操作することで自分の端末内にはデータを残さずにすむシステムや、端末内の情報を自動で暗号化するソフトなど。
大手ソフトウェア会社が開発したスマートフォン向けのアプリは、クラウド技術を活用して自分の端末にデータを残さないようにするとともに、通話料やデータ通信料を「個人用」「仕事用」に分けて集計する機能もあります。
医療現場でもBYOD
必要な情報に素早くアクセスできるBYODのメリットを生かそうとしているのが、熊本県の熊本大学医学部附属病院です。
この病院では、およそ40キロ離れた阿蘇市の阿蘇中央病院に、患者の治療を助言するシステムを去年6月に導入し、そこにBYODを活用しています。
阿蘇中央病院に脳卒中の患者が搬送された際には、医学部附属病院の専門医が持つスマートフォンやタブレット端末に連絡が入ります。
専門医は患者の状況を聞きながら脳のCT画像などを確認し、点滴をするべきかどうかなどを助言する仕組みです。
ふだんから持ち歩いて操作に慣れている端末を使うため素早く対応できるのがメリットで、取り組みを始めてから1年余りの間に治療を受けられる患者が増え、障害を残さずに助かったケースも複数あるということです。
熊本大学医学部附属病院・医療情報経営企画部の宇宿功市郎部長は、「BYODによって専門医がどこにいても患者の情報を見られるので、阿蘇地域で脳卒中になった患者さんが、よりよい治療を受けることができるチャンスが広がった。地域の安心感にもつながると思う」としています。
浸透するかセキュリティ意識
企業がBYODを導入する際に必要なことは、社内規定を明確にすることです。
社員個人の判断で私物の機器を業務に利用し、適切なセキュリティ対策が取られないままでは情報漏えいなどのリスクが高まります。
「コンピュータソフトウェア協会」ではBYODの導入を検討している企業向けに、パスワードの設定方法や端末の不正改造の禁止など、必要となるルールを盛り込んだ社内規定のサンプルを公開しました。
安全にBYODを使うために活用を呼びかけています。
こうしたBYODの利用について、今月(10月)、東京のセキュリティ会社「デジタルアーツ」が行ったアンケートの調査結果が公表されました。
調査はインターネットを通じて1600人余りから回答を得たもので、このうち、個人の私物端末を仕事に使うことが許可されている、いわゆるBYODが許可されていると回答した人は、全体の約36%でした。
そのうちの60%余りは「規則は特になく、自由に使っている」と回答していました。
また、「Dropbox」や「Evernote」など、インターネットにファイルを保存するクラウドツールを利用している人は全体の30%余りでしたが、そのうち40%近くは、ファイルのセキュリティについて「気にならない」と回答しており、BYODを利用する企業や個人の間で、セキュリティ意識が必ずしも十分に浸透していない実態がうかがえます。
スマートフォンなどの情報端末事情に詳しい青森公立大学の木暮祐一准教授は「企業がコスト削減のため、社員にBYODをさせることは、今後もさらに増えるとみられるが、ルールを定めずに行っているケースも少なくない。端末を使いこなしているように見えても、セキュリティについての知識が十分ではない人も多いので、企業は社員に対しての情報リテラシー教育をしっかり行う必要がある」と指摘しています。
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