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核のゴミ 安全性再検証始まる
10月28日 20時1分

核のゴミ 安全性再検証始まる
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原子力発電所を運転すると発生する、いわゆる「核のゴミ」の処分場が決まっていない問題で、経済産業省は、学会から推薦を受けた専門家による会合を開き、東日本大震災によって国民の不安が高まっている処分場の安全性について、改めて検証する作業を始めました。

原発を運転すると発生する高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」について、国は地下深くに造る処分場に埋める計画です。
しかし、放射性物質による環境への影響が数万年以上続くことに加え、東日本大震災をきっかけに、将来起きる地震や火山活動でも処分場の安全性は保たれるのかといった国民の不安が高まっています。
このため経済産業省は、地震や活断層それに地下水など8つの学会から推薦を受けた専門家による会合を開き、14年ぶりに安全性を検証する作業を始めました。
28日の会合では、はじめに、処分場を造る原子力発電環境整備機構から「東日本大震災を踏まえた最新の知見を反映しても安全性の判断に影響はない」とする説明が行われました。
これに対し専門家からは、「地震学では10万年先のことは全く分からない」とか、「マグマが処分場を直撃すれば影響は日本だけにとどまらない」といった指摘が出され、安全性を白紙から見直すべきだという意見が相次ぎました。
経済産業省は、最新の知見を取り込んで来年3月まで安全性を検証し、別の会合で検討している処分の計画そのものの見直しに反映する方針です。

「答えありきの議論しない」

会合の委員長を務める原子力安全研究協会の杤山修所長は、「地下に埋める『地層処分』についての過去の知見に頼るのではなく、全部リセットするつもりで本当に日本で『地層処分』ができるのか、きちんと判断したい」と述べました。
そのうえで「いつの間にか『地層処分』することが前提となった議論が進められていることを国民は疑問に思っているのではないか。答えありきの議論をするのではなく、科学的な知見に立ってしっかり見極めていくことが大切だ」と述べました。

「核のゴミ」処分は喫緊の課題

放射能レベルの極めて高い、いわゆる「核のゴミ」は、原子力が抱える「最大の課題」とも言われていて、その処分場をどこに造るのかは全く決まっていません。
「核のゴミ」は、使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムなどを取り出したあとに残る廃液をガラスで固めたものです。
人が近づくと十数秒で致死量に達するレベルの、極めて強い放射線が出るほか、環境への影響が抑えられるまでに数万年かかります。
日本では、平成12年に処分に関する法律がつくられ、全国の自治体から処分場の候補地を募りましたが、現在、手を挙げている自治体はありません。
その一方で「核のゴミ」は、青森県六ヶ所村の施設に、合わせて1700本余りが保管されているほか、全国の原発にはおよそ2万5000本分に相当する使用済みの核燃料がたまっています。
すでに容量の7割が埋まっていて、原発の運転を再開した場合、早い所では3年程度でいっぱいになる見通しです。
処分場の計画が進まなければ「核のゴミ」は行き場を失いかねず、原発が立地する自治体は、「核のゴミ」を含む使用済みの核燃料がそのまま地元に留め置かれるという懸念を強く持っています。
こうしたなかで、国は、安全性の検証のほかにも、核のゴミに関する新たな取り組みを始めていて、文部科学省は、放射性物質による環境への影響を現状の数万年から数百年に縮める新たな技術の開発に本格的に乗り出し、埋める場所も100分の1程度に小さくすることも目指しています。
また経済産業省は、これまでの計画とは異なる、いったん埋めたあとでも回収ができる形で処分する案を示していて、将来、処分方法の安全性に問題があった場合や、環境への影響を縮める技術が開発された場合に、対応できるようにするねらいです。
「核のゴミ」の処分にめどを付けることは、原発の運転再開とも密接に関係していることから、喫緊の課題となっています。

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