成田線就航をPRする篠田麻里子さん(左から3番目)と井上慎一CEO
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台風一過の成田の空にピンクの機体が現れた。格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションは10月27日、大阪(関西国際空港)―東京(成田国際空港)線の運航を開始した。
関西空港を拠点とするピーチが成田空港に乗り入れるのは、今回が初めて。運賃は片道3790~1万6990円。当面は1日2往復だが、来年1月10日からは3往復となる。
初便となった関空発7時10分の便には、元AKB48のメンバーで同社のカンパニー・アンバサダー(略してCA)である篠田麻里子さんが乗り込み、乗客に対して出発と到着のあいさつなどを行った。篠田さんは「座席が広くて、乗りやすい。お好み焼きなどメニューが豊富で、レストランのようだった」と、初フライトの印象を語った。
■ 今期の黒字化が視野に
目下のピーチは拡大路線を着実に歩んでいる。昨年3月の就航以来、1年半で今回の成田線を含めると14路線を運航。当初は3機でスタートした機材数も、今では10機まで増やしてきた。15年後半までにさらに7機を導入し、17機体制となる予定だ。
LCCの経営において、機材数は重要な意味を持つ。格安の運賃で事業を回していくには、単一機材(同一の機種)を多頻度運航して有効活用することが不可欠。本社費用などの固定費を賄って黒字化するには、最低でも10機程度が必要とされている。
ピーチの開業初年度(2013年3月期)は最終赤字が12億円となったが、航空アナリストで帝京大学非常勤講師の鳥海高太朗氏は「想定の範囲内の赤字で、これまでのところは順調にきている」と分析する。ピーチの井上慎一CEOも「今期中の単年度黒字は株主にも約束している。何としてでも達成する」と、黒字化へ意気込む。
「LCC元年」と言われた2012年には、ピーチをはじめ、ジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパンの3社が事業をスタートした。だが、開業初年度の内実は明暗がクッキリと分かれた。
着実な歩みが続くピーチに対して、成田を拠点とする2社は苦境が続いている。ジェットスターの初年度(2013年6月期)は88億円の最終赤字、エアアジアは2013年3月期が36億円の最終赤字となった。
こうした状況がさらなる焦りを生んだのか、ジェットスターとエアアジアの2社は国土交通省が求めていた定期検査の一部を実施していなかったとして、10月9日に同省から厳重注意を受けた(関連記事:「LCCで初歩的ミスが相次ぐワケ」)。 エアアジアに至っては、出資するANAホールディングスとエアアジア本社が経営方針をめぐって対立したことなどから、今年6月に合弁を解消。11月からバニラエアに生まれ変わる。奇しくも、ピーチが成田に就航した前日にあたる10月26日はエアアジアのラストフライトの日でもあった。
■ 拠点空港で生じる格差
「拠点空港のキャパシティがLCC3社の明暗を分けた大きな要因」と指摘するのは、早稲田大学商学学術院の戸崎肇教授だ。ピーチが拠点とする関空は24時間運営で、運航時間が多少後ろ倒しになっても欠航に至ることはまれだ。実際、ピーチの今年4~9月の就航率は99.8%となっている。
対して、成田空港は原則として6時から23時までしか発着ができない(一部は条件付きで24時まで緩和)。そのため、1つの便が遅れてしまうと、玉突き的に欠航になる便が出やすくなる。特に、ジェットスターは就航初日の昨年7月3日から欠航を出してしまったため、「LCCは遅れるものだというイメージが利用者に刷り込まれてしまった」(鳥海氏)。
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2013/10/30 00:45 更新