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【門田隆将】日本の英知を否定―婚外子「仰天」判決

WiLL 10月29日(火)17時52分配信

遺産相続で泣く人が続出

 いわゆる婚外子相続格差違憲判決で、私は驚いたことが二つある。一つは、大法廷に揃った十四人の最高裁判事が全員一致でこれを「違憲」としたことであり、もう一つは、大手新聞が、一紙の例外もなく、この判決を「支持」したことだ。
 エッと思ったのは、私だけかと思ったら、そうではなかった。時間が経つにつれ、「これはおかしい」という声が出始めた。不倫を助長するのか、あるいは、日本の伝統的家族制度を破壊するのか……等々、さまざまな議論が湧き起こっている。
 だが、私の感想は少々違う。私は直感的にこの違憲判決は「おかしい」と思った。理由はただ一つ、「日本人の長年の英知を否定するのか」ということである。
 ああ、これで、「遺産相続で泣く人」はどのくらい出るのか、と私は思った。不倫の良し悪しや、婚外子への差別などということではなく、私は、結婚をしていない男女の間に生まれた婚外子の相続分は、法律婚をしている夫婦の子(嫡出子)の相続分の「二分の一」と定めている日本の民法が、実に英知を結集したものであると思っていたからだ。
 大金持ちでもない限り、だいたいどんな男でも生涯が終わる時、家を一軒持つのがせいぜいだろう。不倫の末に婚外子をもうけたとしても、「色男、金と力はなかりけり」というのが通り相場だ。

文字通り「一家離散」に

 その婚外子に対して、嫡出子の相続分の「二分の一」としてきたのは、長い間の経験則によるものだと思う。それは、この割合が、長年住み慣れた家に、ぎりぎり「残れるか、残れないか」という微妙なものだからだ。
 生涯で家を一軒持った男の場合、仮にその嫡出子と婚外子との間の相続分が「一対一」になったとしよう。
 それは、イコール「家の売却」を意味する。もし、本妻が生きていた場合、二分の一をまず本妻がとり、嫡出子と婚外子が、その残りを平等に分け合うとするなら、それは家を売却して現金化するしか方法がなくなる。本妻がすでに死亡していれば、なおさらだ。
 では、婚外子の相続分がこれまで通りの嫡出子の「二分の一」だったらどうだろうか。
 これは、現金をなんとかつくって、家を売却しなくて済むぎりぎりだろう。これが、私が「日本人の長年の英知」という所以である。
 普通の家庭では、父親が亡くなった場合、残された妻と、家に住んでいる子供がそのまま家を相続して、他の子供たちは相続を放棄するケースが多い。それが、「家を守る」ということだからだ。しかし、婚外子がいた場合、相続を放棄する可能性はほとんどなく、さらに、これまでの「二倍」を相続させるためには、やはり「家を売らなければならない」ケースが飛躍的に増えるだろう。

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最終更新:10月29日(火)17時52分

WiLL

 

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