GM/シナリオ作成

概要構造課題場面NPC導入情報展開と結末調整


 

概要


 TRPGにおけるシナリオとは、ゲームのあらすじとなる部分です。これはストーリー展開だけではなく、登場する人物(NPC)や舞台の設定などを含めてシナリオと呼んでいます。
 GMはプレイの前にシナリオを作成し、それに沿ってゲームの目的や状況などの情報をプレイヤーに提示してゆきます。そして、プレイヤーは状況に応じて行動を選択し、GMはそれに対してリアクションを返してゆくことで、実際のプレイが進んでゆくことになります。


▼ゲーム性
 TRPGシステムに含まれる世界観、ルール、データ等は、ゲームを形作る部品として用意されているものであり、それ自体がゲームになるわけではありません。実際のゲームはシナリオという形でプレイヤーに提示されるものであり、どのようなゲーム性(選択など)を持たせるのかは、シナリオを作成するGMが決定することになります。


▼展開
 シナリオを作成する際に注意しなければならないのは、TRPGのシナリオは演劇や映画のそれとは異なり、展開や結末に変化が起こりうるということです。
 多くの場合、GMはゲームの目的に加えて、プレイヤーの趣味嗜好を考慮して結末を予測し、シナリオの概要を作成してゆくことになります。ですが、TRPGではセッションの途中で何が起こるかわからないため、結末や途中の展開を何パターンか用意しておく必要があるのです。初めてシナリオを作成するという方は、コンピューターRPGにおけるマルチエンディング・システムを思い浮かべてみればよいでしょう。
 とはいえ、あらゆる事態を想定してシナリオをつくることは不可能です。プレイヤーはGMが予測もしていなかった行動を取ることもあり、その場合はアドリブでシナリオを進めてゆかなければなりません。とはいえ、このような不測の事態が生じてもさほど慌てることはありません。ある程度の準備さえしておけば、シナリオの一部を差し替えるだけで簡単に対応できることもありますし、プレイヤーに展開を考えさせながらプレイを進めてゆくこともできます。慣れてくれば、(勧められることではありませんが)全くのアドリブで話を進めてゆくことも不可能ではありません。
 とはいえ、いくらアドリブがうまくなったとしても、事前の準備をないがしろにしてはいけません。準備が行き届いていれば、不測の事態に直面しても慌てて展開を考える必要なく、スムーズに状況に対応できるものです。


 さて、このパートでは、シナリオを作成するにはどのような準備をするべきかを説明してゆきます。以降の項目は初心者GMのために詳しく書いており、冗長な部分も多々あります。ですから、経験者の方は確認のために、必要な部分にだけざっと目を通しておけばよいでしょう。初心者の方はTRPGのシナリオ作成の基礎をマスターするためにも、最後までゆっくりとお付き合い下さい。


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構造


 一般にTRPGのシナリオは、以下のような要素から成り立っています。GMはこれらを1つずつ設定してゆくことで、シナリオを完成させることになります。しかし、設定する順番は特に決まっておりませんので、自分がやりやすいように決めてゆけばよいでしょう。


○シナリオの流れ

 TRPGのシナリオは一般的な物語と同様に、起承転結や序破急などの構造で説明されることがあります。まれに変則的な構造をとることもありますが、だいたい全体の構造としては以下のような流れとなるはずです。
 
 事前の状況(プロローグ) → 導入 → 展開 → 結末 → 最終状況(エピローグ)
 
 GMはこれらの要素を組み立ててシナリオを構成してゆきますが、TRPGの特性上、展開と結末を事前に決定することができません。しかし、これをまったくの空白とするのではなく、シナリオの流れから幾つかのパターンを予測しておき、それを骨子としてシナリオを進めてゆくことになります。そうでないと、展開をその場で考えなければならず、非常にあわただしい状況でセッションを制御しなければならなくなるからです。場合によってはシナリオに矛盾が生じたり、プレイ事態が破綻してしまうことにもなりかねません。


○シナリオの核

 シナリオの核になるのはシナリオの課題(事件)です。課題とは非日常的なハプニングのことであり、PCはこれを解決する役目となります。課題が決まれば、状況や展開は自然と決まってゆくことになるでしょう。これをふまえた上でシナリオの流れを考えた場合、最も単純な構造は以下のようになります。
 

 
 導入:課題の提示と状況の説明を行います。
 展開:課題解決のための試行錯誤の場面です。
    一般には 情報の入手 → 行動の選択 → 状況の変化 という流れになります。 
 結末:課題を解決するための行動と、その結末を描写する場面です。
 

 
 実際のシナリオでは、展開の部分に幾つかの分岐点を設け、一本道にならないようにする必要があります。つまり、シナリオには選択肢と変化が存在するということで、これがTRPGには必須の要素といえるでしょう。


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課題


○題材と傾向

 シナリオを作成する際にまず考えることは、何を目的としたプレイを望むかということです。何を楽しむためにプレイするのか、参加者がどのような傾向のプレイを望むかで、それに適したシナリオの題材(テーマ)や傾向が絞り込まれてきます。
 シナリオの題材というのは、たとえば犯罪や差別問題といった、いわゆるシナリオのネタと呼ばれるものを指します。題材によって、それぞれシナリオで楽しむべきポイントが異なります。地味な捜査を主体としたシナリオでは、会話や駆け引きといったものがプレイの楽しみに含まれるでしょう。探検や戦闘を想定したシナリオでは、爽快なアクションやスリルを楽しむことが期待されます。
 シナリオの傾向とは、全体における雰囲気のことを指します。TRPGでは、コミカルなプレイもあればシリアスな悲劇を取り扱うこともできます。通常はそれらが適度に合わさった状態でプレイを行いますが、ある程度は傾向を決めておいた方が問題は起こりにくいでしょう。


○評価基準

 GMはシナリオを作成する時に、評価の基準を設定しなければなりません。これには幾つかのポイントがありますが、だいたいは以下のような要素を考えるとよいでしょう。
 

 
 ・シナリオで果たすべき目的は何か
 ・誰が評価対象に含まれるのか
 ・PCが何もしない場合はどのような結果になるのか
 ・PCの活躍によってどのような変化が起こりうるのか
 ・シナリオが失敗した場合はどのような結果に終わるのか 
 


○課題

 ゲームには達成すべき目的が存在しなければなりません。TRPGではPCに与えられる課題の解決が目的となり、GMはシナリオという形でプレイヤーに課題を提示することになります。


▼問題と障害
 アンバランスド・ワールドにおけるシナリオとは、誰かが抱えている問題であるといえます。これをうまく解決することが、プレイヤーが果たさなければならないゲームの課題となります。なお、与えられた課題をクリアするということは、必ずしも敵が存在するということではありません。たとえば人命救助や物を探し出すことでも構いませんし、仲直りさせることがシナリオの課題かもしれないのです。設定するのは敵ではなく、取り除かなければならない問題とそれを妨げる障害であるということに注意して下さい。


▼バランス
 GMはどのような手段をとっても達成できない課題を設定してはいけません。課題や障害はPCの能力に見合ったものでなければなりませんし、GMが解決可能と思っていてもプレイヤーの側から見て不可能にしか見えなければ、解決不能の課題を設定しているのと同じことになります。


▼課題のパターン
 シナリオの課題を構成する一般的要素には、だいたい以下のようなパターンが挙げられます。GMはこういった要素を単独、もしくは複数組み合わせて使用することで、シナリオの課題を作成してゆきます。

・調査:情報の入手、身辺捜査、真実の解明(謎解き)、発見、探検・探索、追跡
・防護:自分の身を守る、誰かを警護する、特定の場所を防御する
・競争:競技、対決、退治、相手の妨害・排除、反乱
・調和:説得、交渉、誤解の解消、協調関係の構築、交易、平和外交
・入手:探索、発掘、作製、発見、購入、交換(交渉)、奪還、盗難、災害救助、身柄の確保
・到達:移動(旅行・探索)、脱出・逃亡、突破


○具体的な目的

 どのようなタイプの課題を設定するかが決まったら、今度は具体的な目的の内容を決定しなければなりません。いわゆる、ネタづくり、という作業です。これはGMの好みやセッションの準備状況(舞台の選択やキャラクターが事前に出来ているかどうかなど)によっても異なりますが、一般に以下のような発想方法が挙げられます。


▼プレイヤーの嗜好
 事前にプレイヤーの好みなどが分かっていれば、それに沿った形のシナリオを用意することが可能です。

▼設定
 キャラクター、世界、ルール、データ、NPCの設定などを手がかりに目的を考えます。

▼状況
 特定の場面、状況を想定してシナリオを構築するやり方です。絵になるシーンやプレイヤーが好みそうなパターン、映画や小説などで見たことのあるシーン、特定の台詞、美しいラストシーンなどを思い描きながらシナリオを構成します。

▼現実世界
 現実世界で起こった事件や歴史を参考にするやり方もあります。新聞、雑誌、教科書といった身近な資料や様々な事柄に広く目を向け、シナリオの題材を探してみて下さい。

▼キーワード
 キーワードを羅列してゆき、それを組み合わせることでシナリオを構築してゆく方法もあります。落語の三題噺のようなものと思っていただければわかりやすいでしょう。

▼参考/模倣
 映画、小説、漫画などの既存の作品をもとにシナリオを作成するやり方です。そもそも、完全にオリジナルの作品を新たに生み出すのは困難なことであり、殆ど不可能といっても差し支えありません。ですから、既存の物語を下敷きにしてシナリオを作るのは恥ずべきことではないのです。むしろ、どんどん積極的に利用して下さい。


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場面


 課題の大まかな内容が決定したら、シナリオの流れ(プロローグ→導入→展開→結末→エピローグ)に沿って、シナリオのパーツとなるシーン(場面)と、その場面内で起こるイベント(出来事)を設定してゆきます。


○シーンとイベント

 個々の場面のことをシーンと呼び、1つのシーンの中には幾つかのイベントが含まれます。イベントとはシナリオの中で起こる出来事をさすものです。


▼流れ
 まずGMは、先に決めた大まかな課題を念頭に置きながら、どのような流れで状況が変化してゆくのかを予測します。そして、この流れに応じてシーンを配置し、その中で起こりうるイベントを詳しく設定してゆくことになります。

▼イベントの構築
 シーンの中でキャラクターが何をするのか、そのシーンがどのような役割を担うのかを設定します。そして、イベントがどのような行動によって解決するのか、つまりPCに具体的に何を行わせたいのかをイメージしなければなりません。

▼イベントの推移
 イベントには様々な形式がありますが、これに対してPCがリアクションすることで状況が推移し、シーンが進行してゆきます。起こりうる様々なイベントの結果に対して、シナリオの展開がどのように変化するかを考えて下さい。

▼シーンの移行
 1つのシーンは、内部に含まれるイベントの結果に応じた結末を迎えます。これを受けて以降のシーンの内容が決定し、シナリオは新たな展開へと推移してゆきます。シナリオの進行とは常にこの繰り返しとなります。GMはそれぞれのシーンごとに、どのようにシナリオが展開(分岐)するのかを予測しておいて下さい。


○シーンの設定

 各シーンを詳細に設定するためには、シーン内でのイベントの内容を考えなければなりません。


▼課題
 シーン内で果たすべき課題を設定する作業は、何を行えばシナリオの課題を解決することに結びつくのか、つまりPCに具体的に何を行わせたいのかをイメージすることから始まります。


▼5W1H
 物語を具体的に構築するためには、5W1Hと呼ばれる6つの要素に気を配る必要があります。
 
・「Who(誰が)」
・「When(いつ)」
・「Where(どこで)」
・「Why(なぜ)」
・「What(何を)」
・「How(どのように)」
 
 このように「誰が、いつ、どこで、何を、どのようにした」かを設定するわけです。各シーンにおいてこれらの要素を設定しておけば、各状況(イベント)が生成される理由が明確となりますし、必要な情報を欠落させることなくシナリオを作成することが出来ます。


○イベントの設定

 次に、シーンをクリアするための障害や状況の変化をもたらす役目を果たす、イベントの内容を設定しなければなりません。GMはイベントという形で局面における障害や状況の変化を用意しておき、シナリオの展開や条件(時間の経過、特定地点への到達、作業の達成度合いなど)に応じてそれを発生させます。


▼問題
 シーンの構築を行う際と同様に、まず最初に解決すべき問題の概要を書き出します。次に、「何が問題になっているのか?」「誰が困っているのか?」「事件が解決できない理由は何か?」「なぜPCがその事件に関わるのか?」「なぜその事件がPCに解決できるのか?」といった事柄を1つずつ埋めてゆくことで、前提条件が整ってゆきます。

▼活躍の度合い
 各PCに対して、なるべく1回はメインで活躍できる場面を用意するよう心掛けましょう。PCを予め作成していない場合は、情報収集、謎解き、会話、活劇(競争や戦闘)といった要素を幅広く取り入れるようにして下さい。

▼状況設定
 ここで言う状況設定とは、舞台となる場所や登場人物のことです。これらはPCの障害となる場合もありますし、PCが利用する資源としての役割を果たすこともあります。問題と前提条件に応じて、規模やPCとの関係などを決定して下さい。

▼達成条件/障害
 次に目的をクリアするための達成条件を設定します。達成条件を設定するということは、問題解決の妨げとなる障害を設定することでもあります。達成条件を設定する際には解決手段だけでなく、いつまで解決すればよいのか、解決すべき最低限のライン、許される失敗の程度、といった点も同時に考えておいて下さい。

▼障害の難度
 障害の難度には様々なものがあり、これはシナリオの内容や進行の程度、シーン/イベントの重要度によって変化します。そのため、ここでは明確な基準を示すことは出来ませんが、展開部における繋ぎの場面では失敗の回復がしやすいように、あまり難度の高い達成条件を設けるべきではありません。逆に、シナリオの成否に直接関連するようなクライマックスの場面では、条件を多少きつくしても構わないでしょう。

▼解決方法
 解決手段には、情報収集(聞き込み、記録調査、情報交換、潜入)、対話(交渉、説得、嘘)、戦闘、移動(逃亡、競争)など様々なものが考えられます。
 具体的な解法を準備するためには、解決のために必要な情報、物品、状況、支援の内容や程度などを考えればよいでしょう。この時、コストをどの程度までかけられるのか、条件を満たせなかった場合の代替方法などにも気を配っておけば、状況の推移に慌てず対処することが出来ます。

▼状況の推移
 最後に、イベントの結果によってどのように状況が変化してゆくのかを考えます。これは成功/失敗の程度だけでなく、成功/失敗による周囲への影響、放置していると事態はどのように悪化して行くのか、失敗しても回復する余地が残されているのか、といったことも含んでいます。


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NPC


 次に、ゲームに登場するNPCを考えます。NPCとはノン・プレイヤー・キャラクターの略で、プレイヤーキャラクター以外の登場人物をあらわします。つまり、GMが操る人々のことであり、重要なものも単なるエキストラ的な役割のものも全て含まれます。


○役割

 ゲーム世界の中では、GMはNPCを通して情報を提示したり、プレイヤーを誘導したりといった作業を行うことになります。NPCを設定する場合は、まず、そのNPCが何のために存在するのかという理由を考えましょう。つまり、シナリオの中での役割ということです。

・障害:敵対者、説得対象、交渉相手、門番、足手纏いなど
・支援:物品・金銭の援助者、場所の提供者など
・影響:精神的影響を与える存在、足手まといなど
・情報:シナリオに関連する情報の提供者
・目的:シナリオに目的をもたらす者、あるいは存在そのものが目的となる者
・手段:能力的な支援を行うNPC、あるいは特別な技術や道具を所持している者
・背景:単なる一般人など、エキストラ的な役割をする者


○設定

 NPCの役割を決めたら、次は細部の設定を行います。


▼一般的要素
 名前、年齢、職業、住所、身分、経歴といった一般的な要素です。

▼行動指針
 NPCの目的や主義思想などに関連する部分です。大雑把にでも決めておけば、突発的な事態に直面した場合でも、NPCがどのような行動を取るかを悩まずに済むでしょう。

▼人間関係
 PCとどのような関係を持つか、あるいは相手に対してどのような感情を抱くかを設定します。これはあくまでも予定であって、実際に会ってから関係が変化する可能性があります。

▼背景情報
 どのような経緯で事件と関わるようになったのかなどの要素です。PCに語られない情報もあるでしょうし、背景情報を探ることがシナリオの課題の1つである場合もあります。

▼特徴
 その人物らしさであり、どのようにNPCを印象づけるかの手段でもあります。外見、性格、口調など、さまざまなものが存在します。

▼影響範囲
 権力や財力など、そのNPCがどこまでの影響力を持つのかを決定します。この範囲を超えて影響を及ぼすことができないという枠組みを決めておけば、GMがそのNPCを使って何ができるのかが明確になります。行動指針と同様に、その人物の行動を決定するための基盤となる要素です。

▼データ
 NPCの数値的データや所持品などです。判定を行わないようなNPCは、それほど細かく決定する必要はありません。


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導入


○参加理由

 シナリオの導入を考える際にまず念頭に置いておくべきは、PCの立場についてです。ここでいう立場とは、シナリオ(事件)に対してどのように関わるのかを意味します。


▼動機
 セッションでは何らかの事件が発生し、それが解決されることで結末を迎えることになります。そのため、TRPGを遊ぶためには、PCは何らかの理由(動機)で事件に参加しなければなりません。

▼使命性
 PCをセッションに参加させるためには、一般には押しと引きというテクニックが用いられます。押しというのは、PCを事件に関わらざるを得ない状況に追い込む手法のことです。引きというのはPCの前に興味を引くような題材を提示し、自発的に動くよう誘導する手法のことです。この2つとは別に、プレイヤー自らが題材を作り上げ、積極的にセッションに参加する状況もありますが、これはあまり一般的ではありません。

▼バランス
 押しと引きは、それぞれ単独で用いなければならないものではありません。押しだけというのは不満を生みやすいものですし、引きだけでは取っ掛かりを探し出すのに苦労することがあります。押しと引きの要素を適度に織り交ぜておいた方が、実際のセッションではうまく機能するものです。


○導入のタイプ

 実際に状況として起こりうる導入のタイプとしては、依頼型、巻き込まれ型、自発型の3種類に分類されます。


▼依頼型
 金銭、情、人間関係、取り引き、立場といったものが依頼を受ける理由となります。脅迫や命令といった非常に強い拘束力を持つ導入も、この依頼型の導入に含まれます。

▼巻き込まれ型
 文字通り、何らかの状況に巻き込まれることで事件に関わることになります。このタイプも、依頼型と同様に強制力の強いものと弱いものがあります。

▼自発型
 PCが自分から動いて事件に関わって行く場合です。情の深い人間や知的探求心が強いタイプなど、キャラクターのパーソナリティを設定する時点から、それなりの配慮が必要となるでしょう。このタイプの導入を用いる場合は、プレイヤーが自発的に動くことを期待して待つのは避け、なるべくプレイヤーの協力を予め取り付けておくべきです。


▼複数ルート
 導入のためのルートは複数用意しておいた方がよいでしょう。GMは依頼などメインに考えている導入の他にも、セッションにキャラクターを引き込むネタを幾つか用意しておくべきです。ただし、1人のPCが絡めばその仲間も引き込めるので、必ずしもキャラクター全員に導入を準備しなければならないわけではありません。


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情報


 事件を解決するためには、解決方法にたどり着くための情報が必要となります。


○内容

 課題、前提条件、解決方法の例などを設定した後は、解決手段をプレイヤーが模索するための情報の提示(入手手段)を考えることになります。この時、いつ、どこで、誰(何)から、どのような内容の情報を、どうやって手に入れるのかを設定しなければなりません。


▼「いつ」
 これはシナリオのどのタイミング(シーン)で情報を明かすのかということで、場面や展開をコントロールする意味で重要になります。

▼「どこで」
 これは、情報を手に入れる条件の1つとして考えるとよいでしょう。そこにたどり着くまでの過程にも障害を設定することが出来ますし、場所を探すこと自体もイベントとして利用することが出来ます。

▼「誰(何)から」
 どのような媒体を通じて情報を得るのかということです。その媒体から情報を得るための手段(言語、条件、前提知識など)を設定することで、さらなるイベントを設定することが可能となります。
  
▼「どのような」
 情報の具体的な内容です。これについては後述しますが、情報の重要度や、それを得られなかった場合の展開や対処法などについても、同時に用意しておく必要があります。

▼「どうやって」
 情報を手に入れる手段・条件のことで、代償を要求することで情報収集から次のイベントへと展開を膨らませることが出来ます。


○重要度

 シナリオを作成する時は、その情報が問題の解決においてどの程度の重要性を持つのかを考えておく必要があります。


▼必須情報/必要な情報
 最も重要なものは、それを得られないと話が展開しなくなるような必須情報です。その次に重要なものは、その情報が得られないことでシナリオ進行が妨げられる可能性のある情報、またはPCの行動が著しく制限されたり、不利になる可能性のある情報となります。これらの情報については、それが得られなかった場合のフォロー手段を用意しておく必要があるでしょう。

▼有効な情報
 この次に重要なものは、それを知っていることでシナリオがスムーズに展開する、もしくはPCの行動が有利になるといった情報です。これは知らなくてもセッションの進行を妨げるものではないため、それを得るためのルートを複数用意したり、失敗の回復手段を幾つも考えておく必要はないでしょう。

▼偽情報
 上の2つとは別の機能を持つ情報としては、ミスディレクション、すなわち誤誘導となる情報があります。これにはPCを騙すための全くの嘘の情報と、真実だが(言い方や断片的にしか与えられないなど)伝達の過程によってはプレイヤーが誤解するような情報の、大きく2種類に分かれます。

▼伏線
 伏線にもいろいろな種類があり、そのシーンに直接作用するとは限りませんが、後に有効となる可能性のある情報や、以降のセッションに関連する情報などがあります。

▼追加情報
 シナリオとは直接的な関連性のない情報や、それを得るためにPCに時間を使わせるための情報などが挙げられます。これは単に無駄な情報としてだけではなく、舞台やNPCの性格づけに利用されるものも含みます。


○提示

▼順番
 情報の提示について考える時は、入手する順番が非常に重要になります。セッションでは特定の情報を得ることで次の展開へと進むような形が多くなりますが、現実のセッションは流動的ですので、必ずしもGMの構想通りに情報が明かされるとは限りません。ですから、その情報をどのタイミングで明かすべきかについては、流れの中でしっかりと把握しておきましょう。

▼展開
 全ての情報が必ずしもプレイヤーの手に渡るとは限りません。しかし、情報の重要性によっては、その後のシナリオの展開に支障を来すこともありますので、情報が手に入らなかった場合の回復方法を考えておく必要があります。
 どのような場合にせよ、情報が手に入った場合はどうなるのか、手に入らなかった場合はどうなるのかということだけは、シナリオ作成時に想定しておかなければなりません。この時、細かい情報にとらわれる必要はありません。入手できたかどうかによって、その後の展開に大きく影響を与えそうな情報だけを選んでメモしておいて下さい。

▼分量
 TRPGのセッションにおいては、情報量のコントロールも重要となります。たとえば、たった1つの情報が手に入っただけで解決してしまうようでは、殆どの場合はゲームが成立しません。しかし、逆にうんざりするほど情報を集めなければ話が進まないセッションというのも、プレイヤーのやる気を削いでしまうものです。


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展開と結末


○主体

 シナリオの進行条件には幾つかのパターンがあります。これは、誰の動きを主体として見るかによって変わります。この他にも考えられるシナリオ進行のタイプはあるでしょうが、よほど変わったスタイルのシナリオを組む意図がなければ、以下のバリエーションで殆どカバーできるはずです。


▼イベント主導型
 特定のイベントが発生することを前提としたシナリオや、予め用意されたイベントをセッションの展開に合わせて発生させてゆくやり方です。特定の発言や行動、特定地点への到達など、何らかの条件が揃った時にイベントが起こるパターンが多く、前段階の結果に応じて展開が変化します。ごく一般的なシナリオの形式といっていいでしょう。

▼時間主導型
 時間によって何らかのイベントが発生したり、展開が変化するタイプのシナリオです。規定された時間までに達成条件をクリアできなければ何らかのイベントが発生するような、時限爆弾型の展開もこれに含まれます。

▼状況/NPC主導型
 PC以外の存在がそれぞれ自分の思惑通りに動き、その行動結果に応じてシーンが移行するタイプのシナリオです。この場合、シーンや状況にとってPCは外来者であり、PCがいなければGMが想定した結末をそのまま迎えることになります。

▼PC主導型
 PCの行動が全体の展開を支配します。周囲はPCの行動に応じて動き、発生した事態に対処してゆくことになります。TRPGとしてはまれなタイプといえるでしょう。この方法はPCが積極的に動いてくれないと破綻する可能性が高いもので、状況を判断できるだけの情報を十分に得られなかったり、圧倒的不利な状況に置かれたりした場合のフォローには、特に気を使わなければなりません。


○分岐点

▼準備
 TRPGのシナリオは一本道ではなく、展開によってどこかで分岐する可能性のあるポイントが存在します。分岐が起こる理由にはNPCの思惑や時間の推移など様々なものがありますが、その殆どはPCの行動選択によって起こると考えてよいでしょう。GMはストーリーが分岐する可能性の高いシーン(ターニングポイント)を予めチェックしておき、分岐した場合の展開を考えておく必要があります。

▼シナリオの空白
 シナリオにはどうしても空白になってしまう部分があります。それは、プレイヤーが実際にどのように行動するか、という部分がシナリオには書かれていないからです。こうした部分は、GMはプレイヤーがどのような行動をするか予測して、幾つかの分岐パターンを考えておかなければなりません。


○選択肢

 TRPGでは、PCが様々な情報を手がかりにして、次に取る手段・行動を選択することでシナリオが進んでゆきます。ゲームとしてのTRPGは、ほぼ全てが選択枝によって成り立っているといってもよいでしょう。選択肢がないシナリオは、いわゆる一本道シナリオといわれ、多くのプレイヤーに敬遠されるものです。なぜならば、プレイヤーはGMの1人芝居を聞くためにゲームに参加しているのではないからです。


▼選択の結果
 当然のことですが、選択肢を用意した場合は、プレイヤーの判断によって結果がどう変わるのかを予め考えておかなければなりません。
 局面においてどのような手段を取るかも選択枝の1つですが、殆どのシナリオでは全体を左右する重要な選択枝についてのみ予測しておけばよいでしょう。これは基本的にシーン単位で考えておけばよく、よほど重要なものでなければ、1つ1つの判定に細かい基準を設定しておく必要はありません。

▼有利な選択肢
 選択肢を用意する場合に重要になるのは、絶対的に有利な選択肢を与えないことです。これはセッションからゲーム性を失わせ、ゲームとしての面白みを消してしまう行為ですので、特に注意しなければなりません。

▼メリットとデメリット
 選択をより面白いものにしたい場合は、危険だが速く到達できる道と安全だが時間のかかる道のように、それぞれにメリットとデメリットを用意して下さい。通常、提示されるメリットの大きさは、デメリット(代償、リスク、交換条件など)の大きさに比例するように設定します。
 デメリットが存在する場合は、情報収集などによってそれがわかるように設定しておかなければ、選択肢として機能しないことになります。情報収集で致命的な失敗を犯したり、明らかに常識の範疇にあることに気づかなかった、といった状況でもなければ、存在を匂わせるぐらいの情報は必ず与えておくべきです。


○結末の予測

 シナリオにおける結末というのは、途中の展開と同様に予め決定しておくことは出来ません。プレイヤーの選択と行動の結果から、もっとも妥当な展開を選択し、それを演出するしかないのです。しかし、ある程度の予測は可能ですし、それに対して何らかの準備はしておく必要があります。


▼解決の度合いと展開
 シナリオの結末は、課題をどの程度まで解決できたのかによって変化します。ですから、GMはシナリオを作成する際に、解決の度合いに応じた結末を幾つか用意しておく必要があります。

▼周辺状況の変化
 PCの行動によって周囲の状況が変化すれば、当事者だけでなくPCにとっても何らかの変化が訪れることでしょう。こういった状況を描写することもGMの仕事の1つとなります。

▼報酬
 課題の解決によって依頼や社会的貢献を果たした場合は、金銭的報酬や名声など、何らかの報酬が得られる可能性があります。逆に大きな失敗によって地位を奪われたり、周囲に被害を及ぼしたことで賠償を求められることもあるでしょう。
 GMは結末やPCの貢献度に応じた報酬を与えなければなりません。報酬そのものはゲームの目的ではありませんし、必ずしも与えなければならないわけではありません。しかし、同じPCを継続して用いる場合、金銭や物資は次のシナリオで利用できる資源となりますし、報酬があるかないかではプレイヤーの満足度もずいぶんと違うものです。

▼注意点
 結末を考える上で忘れてはならないのは、シナリオの課題が誰にとっての問題であったのか、という点についてです。当事者が解決したと思っていなければ、いくらプレイヤーがシナリオをクリアしたと思っていても、問題は残されたままとなっているのです。このゲームでは他者の感情の動きも評価対象となりますので、これについては特に注意して下さい。


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調整


 これまでの過程で、シナリオの作成は一通り終了しました。しかし、これでシナリオが完成というわけではありません。GMは少し時間を置いてから、今度はプレイヤーやPCの視点からシナリオを見直す作業をしてみましょう。場合によっては何か設定し忘れている箇所があるかもしれませんし、矛盾に気づくかもしれません。


○目的と解決方法

 どのような方針を立て、どのような対策を練ることでシナリオの課題を解決できるのかを、もう1度プレイヤーの視点で考えてみましょう。

・目的:目的の把握、絞り込み、目的の提示方法、矛盾
・解決:解決手段の提供方法、技能の有無、難解さ、情報の提示


○展開と予測

 シーンやイベントの移行や状況の変化と結末について、予測を立てながら見直してゆきましょう。

・PCの行動:行動の予測、失敗した場合の対策
・状況の変化:分岐点、選択肢の意味、変化の原因と結果、展開の予測、展開の起伏


○データバランス

 GMは障害の数値的な面などについても、ゲームバランスが取れているか確認しなければなりません。つまり、キャラクターの能力や利用できる資源に対して、障害の難易度や敵の強さが適正であるか検討しておく必要があります。GMはPCがどうやっても乗り越えられないような障害を置いたり、戦闘の出来ないPCの前に凶悪な怪物をいきなり出すような真似をしてはいけないのです。

・項目:難易度、判定値、専門分野の有無、状況による修正、敵対者の能力


○時間調整

 TRPGでは展開が定められていないために、GMが事前に予期していたよりもセッションが長引くことがよくあります。ゲームを行うことが出来る時間は無限に存在するわけではありませんし、予めセッション時間が定められている場合、シナリオの最後までたどり着くことが出来ずに、尻切れトンボで終わってしまう可能性も少なくありません。こういったことを避けるためにも、GMは事前に時間管理について考えておかなければなりません。


▼構成と予測
 まず、全体の構成を見て、各シーンへの時間配分を行って下さい。それから、説明時間、作業時間、思考時間、会話時間を予測し、時間のかかりそうなシーンや、短縮できる要素を考えてゆきます。長いシナリオの場合は、休憩時間を考慮することも忘れないようにして下さい。

▼短縮できる要素
 導入部の説明や、キャラクターの関係を構築する場面は、GMが簡潔に説明することによって短縮することが可能となります。また、与える情報を簡素化する、情報収集の場面では会話を省いて判定で処理する、情報を予め文章にしておいてプレイヤーに渡すなどの手段も有効でしょう。
 それから、時間のかかる判定を繰り返すようなシーンをなるべく省くことも、時間短縮の1つの方法です。特に戦闘は時間がかかる作業ですから、1つのセッションに3回も4回も戦闘シーンを用意するべきではありません。


○最終作業

▼流れの整理
 最後に、これまで作成したシナリオの流れをフローチャートなどにまとめます。そして、イベントや必要な情報をシーンごとに分類し、各々の達成条件や分岐点などを確認します。

▼データの整理
 次はNPCや怪物のデータを整理し、シートなどに記入しておきます。それから、もし必要であれば地図や情報を記したメモを準備したり、説明を要するルールやよく使う表などを抜粋してまとめておいて下さい。


○完成

 以上の作業を全て終えれば、シナリオは完成となります。あとは実際にプレイヤーを集めて、セッションを行うだけです。
 シナリオの作成作業は慣れないうちは時間がかかりますし、迷ったり悩んだりする点も多々あると思います。しかし、経験を積むことで問題に対処できるようになるはずですし、やがては自分なりのシナリオ作成術を身につけられることでしょう。


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概要構造課題場面NPC導入情報展開と結末調整