講演:在日韓国人ピアニスト・崔善愛さん、甲府でショパン題材に 「故郷奪われた人たちを考えて」 /山梨
毎日新聞 2013年10月27日 地方版
在日外国人の人権問題や平和活動に携わってきた在日韓国人ピアニスト、崔善愛(チェソンエ)さん(53)による講演会が26日、甲府市酒折2の山梨学院大で開かれた。テーマは「ショパン その音楽と人生〜花束に隠された大砲〜」。約50人の聴衆が、祖国ポーランドを思いながらフランスに亡命し、郷愁を込めて作曲を続けたフレデリック・ショパン(1810〜49)の話に耳を傾けた。
この日は、崔さんがショパンの「ノクターン」の音源を流し、リストやシューマンがショパンの曲について「喪服を着ているようだ」と評したエピソードを紹介。ロシア帝国の支配下にあったポーランドを離れ、フランスで音楽活動に励んだショパンについて「情熱的でロマンチックなイメージがあるが、彼の本質は民族の悲しみを背負った音楽だった」と解説した。
大阪市生まれの崔さんは1986年、ピアノ留学のための出国時に指紋押なつを拒否して渡米。帰国時に永住権を奪われ、2000年に施行された改正外国人登録法で永住資格を取り戻した経験を持つ。留学中に、祖国を思うショパンの手紙を読み「本質に触れた」という。
講演の最後には、東京電力福島第1原発事故で郷里を追われた被災者にも言及。「当たり前にあった故郷を奪われた人たちが今の日本にもいる。ショパンに触れ、そんなことも考えていってほしい」と締めくくった。【春増翔太】