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最終更新:2013年10月28日(月) 21時50分

タクシー運転手どう守る、車内カメラが捉えた暴力

 依然なくならないタクシーの車内で起きる犯罪。密室のため狙われる運転手をいかにして守るのか、犯罪の実態とその防犯対策を取材しました。

 大阪の繁華街・ミナミ。ここを中心に11年タクシーを運転しているAさんは、10月初め、客から暴力を受けました。

 「手を出すというのはよほどのことがないと出ませんから、びっくりしました」(Aさん)

 そのときの一部始終を車内カメラが捉えていました。午前3時半ごろ、若い男が乗ってきました。相当酒に酔っているのか、男は行き先を告げると、すぐに眠りにつきました。しかし、5分後に目を覚まし、唐突に話し出しました。

 「時計とか返してもらっていいですか?」(男)
 「え?時計、何?」(Aさん)
 「返してもらえる?」(男)

 時計を預けたはずだと言い出した。

 「出してないですよ」(Aさん)
 「本気で言うてんの?」(男)

 男は因縁をつけ、助手席の後ろに貼ってある乗務員証を奪って、金を払わずに外に出ようとしました。

 「110番するよ」(Aさん)
 「せえよ」(男)

 男はAさんの顔を殴りました。Aさんは警察に通報。男は駆けつけた警察官に暴行容疑で逮捕されました。

 タクシーの運転手が被害に遭った、より悪質な強盗事件の発生件数。運転席の仕切り板の導入など各社が対策を進めたため、その数は減ってはいますが、全国で毎年100件以上起き続けています。2008年には、兵庫と大阪で客を装った強盗に運転手が殺害される事件までありました。

 こうした車内での犯罪やトラブルを防ごうと導入されたのが車内カメラです。現在、大阪タクシー協会に加盟するタクシーはおよそ6割が搭載し、車内で何が起きたかを証明する重要な証拠として活用されています。

 2010年に記録された映像。車内でおう吐した客が、注意した運転手につかみかかりました。

 「お前、何ぬかしてんねん!」(男)

 暴行はおよそ10分間続きました。そして、通報を受けた警察が到着。

 「お前、人生棒に振るぞ!」(警察官)

 男は傷害容疑で現行犯逮捕されました。

 今年6月には、車内カメラの映像によって逃走した犯人の逮捕につながったケースもあります。人気のない駐車場に止めるよう指示した男。突然・・・

 「金ないねん、金くれ」(男)

 刃物のついた工具を突きつけ、金を要求。

 「1万でもいいから出せ!出さんと命取るぞ!」(男)

 男は力づくで小銭入れを奪い取りました。

 「どこや、札」(男)

 運転手がクラクションを鳴らすと、男は逃走しました。この映像をもとに警察がおよそ3か月後に逮捕。取り調べに対し、男は「タクシーは密室なので人目につかず、金をとれると思った」と供述しているといいます。

 車内カメラは犯人に心理的影響を与え、一定の抑止効果があります。しかし、証拠として使われるのはもっぱら事件後というのが現実です。大阪市内のタクシー会社では、運転手の身を守るため、新人に防犯講習を行っています。

 「じっと顔見てください。ちょっと悪いことしようかなと考えている人だったら、顔見られたし、やめとこうかなということにもなるんで。そのための防犯の意味もこのティッシュにはあります」(教育係)

 何気ない行動の中にも不審な客に心理的なプレッシャーを与えることで、犯罪を抑止する効果があると言います。さらにGPSを使った独自の防犯システムも。

 「緑が空車、赤が実車。色によってさまざまな車の状態が見られる」

 運転手は車に設置された緊急時のボタンで危険を知らせます。被害に遭った運転手が運転席に設置した緊急ボタンを押すと、大きな音とともにあんどんが点滅。さらに、犯人に向かって強い光を放ちます。すると、その情報は同時に配車センターに送られ、警察に通報するというものです。

 「やはり現場でのトラブル、つかみ合いとかいうことが実際起こっていますので、やはり110番して、やっぱり1秒を争いますんで」(国際興業大阪 配車センター 平田剛士主任)

 不特定多数の乗客を乗せなければならないうえに、密室となるタクシーの車内。いつ起きてもおかしくない危険から運転手を守る取り組みは続きます。(28日18:14)

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