原子力規制委:東電社長と会談、原発再稼働への進展なし
毎日新聞 2013年10月28日 21時09分
原子力規制委員会の田中俊一委員長と東京電力の広瀬直己社長は28日、福島第1原発の汚染水対策をめぐり初めて会談した。汚染水対策の態勢強化を説明する広瀬社長に対し、田中委員長は「長期的な視点で、抜本的な改革をしてほしい」と要請。柏崎刈羽原発(新潟県)の審査入りは議題にすらならず、東電が期待していた原発再稼働に向けた進展はなかった。
「極めて大事。(9月25日の)泉田裕彦知事との会談と同じぐらい大事だ」。広瀬社長は田中委員長との会談前、周囲にこう決意を語っていた。柏崎刈羽の再稼働は東電にとって経営再建のカギを握る重要課題だが、福島第1原発の汚染水トラブルの深刻化を問題視する規制委が安全審査入りを棚上げしている状態だった。1カ月前、再稼働に反対する新潟県の泉田知事から安全審査の申請に関する条件付き承認をやっとの思いで得た経緯があるだけに、東電内では汚染水処理の抜本対策を田中委員長に直接示し、早期の審査開始につなげたいとの思惑が強まっていた。
しかし、28日の会談で議題に上ったのは、福島の現場の作業員の士気をどう維持していくかなど汚染水処理の進め方に関する問題点のみ。会談後、池田克彦・原子力規制庁長官は柏崎刈羽の安全審査について、「現状をどう改善しているか、よく見ながら進めていく」と述べ、当面は審査を凍結する考えを明らかにした。東電内では「田中委員長から課題を指摘してもらうことで、対策をとりやすくなる」(幹部)との見方もあった。しかし、会談では具体的な指摘はなく、東電が早期に規制委の理解を得られるかは見通せない。
審査入りの遅れは、柏崎刈羽の再稼働を急ぎたい東電にとっては痛手だ。審査には約半年がかかるとされるが、それは通常の原発の場合。原発事故を起こした事業者であるばかりか、汚染水問題を抱え、東電幹部の「一段と長い審査期間がかかる」との懸念が現実になった格好だ。12月をめどに策定する方針の総合特別事業計画(再建計画)の遅れにつながる可能性もある。【大久保渉、浜中慎哉】