原発:30キロ圏内自治体、避難計画7割未策定 本紙調査
毎日新聞 2013年10月27日 07時00分(最終更新 10月27日 11時14分)
国の原子力規制委員会が原子力災害対策指針(新指針)に基づき、全国の原発30キロ圏内にある21道府県136市町村に策定を求めている原発事故時の避難計画について、策定済みが38市町村(約28%)にとどまっていることが毎日新聞の調査で分かった。原発再稼働に向けた電力各社による安全審査の申請が相次ぐ中、自治体側には住民をどう避難させるかに迷いがある実態が浮き彫りになった。一方で、避難計画策定の義務がない30キロ圏外の21市町村が、避難や避難者受け入れを想定した独自の防災計画作りに取り組んでいることも判明した。【神保圭作、五十嵐和大】
◇具体策で迷い
新指針は規制委が今年7月、東京電力福島第1原発事故を受けて施行。重点的に防災対策を進める自治体の対象を従来の「8〜10キロ圏」から「30キロ圏」に拡大した。該当する自治体は15道府県45市町村から21道府県136市町村に増え、各自治体に(1)地域防災計画原子力災害対策編(2)避難計画−−の策定を義務づけた。
毎日新聞がこの21道府県に取材したところ、9月現在で(1)は121市町村(約89%)が策定済みだが、(2)は38市町村と約28%だった。避難手段や避難道路の選定に時間がかかっているケースが目立ち、高齢者や障害者ら「災害時要援護者」の避難先が決められない市町村もあるという。
東電柏崎刈羽原発の安全審査の申請を条件付きで容認した新潟県の泉田裕彦知事は「規制委は避難指示の指揮系統、高速道やJRの規制方法など誘導の考え方を明確にしてほしい。電力会社も自治体と協議する責任がある」と注文する。
東電は自治体に協力する専属チームを設ける。政府も新たな組織を設置し、都道府県をまたがる避難者の受け入れ先の調整や、避難手段の確保を支援する。今後、協議会を地域ごとに設立する予定だが、原子力規制庁の担当者は「できるだけ早く支援態勢を作りたい」と述べるにとどまり、時期を明示していない。