夜の闇が広がる中、神体を納めた器は絹垣(きんがい)と呼ばれる白い絹の布で覆い隠され、神職たちに守られながら新しい正殿へ進んだ=2日夜、三重県伊勢市の伊勢神宮内宮、細川卓撮影 |
遷御の儀のため、正殿に参進する臨時祭主の黒田清子さん(中央)と神職たち=2日午後6時10分、三重県伊勢市の伊勢神宮内宮、川津陽一撮影 |
伊勢神宮(三重県伊勢市)で2日夜、20年ごとに社殿などを一新する式年遷宮で内宮(ないくう)の神体を新正殿(しょうでん)に移す「遷御(せんぎょ)の儀」があった。1300年余の歴史を伝え今回で62回目、戦後4回目となる神道最大の儀式に、皇族代表の秋篠宮さまや安倍晋三首相らが参列した。
伊勢と出雲の遷宮特集はこちら首相が参列したのは1929(昭和4)年、58回の浜口雄幸首相以来で戦後初めて。ほかに麻生太郎副総理ら8閣僚が参列し、政財界関係者など約3千人が拝観した。閣僚らの参拝を巡っては、国の宗教活動を禁じた「政教分離の原則」に抵触するかどうかの議論がある。
参道の常夜灯などの明かりが消されると、天皇の使いである勅使が「出御(しゅつぎょ)」を告げた。午後8時、旧正殿を出た神体の八咫鏡(やたのかがみ)は、白い絹の布で覆い隠され、神宝の太刀や盾、鉾(ほこ)などを持った神職ら百数十人に前後を守られるように進んだ。
暗闇のなか、提灯(ちょうちん)の明かりにうっすらと照らされた白い絹の布が通り過ぎると、人々は頭を垂れ、柏手(かしわで)を打った。同40分ごろ、西隣の新正殿に「入御(じゅぎょ)」した。
3日午前5時に一般参拝者の受け入れを再開する。外宮(げくう)の遷御の儀は5日。
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〈式年遷宮〉 内宮・外宮の両正殿や、14別宮の社殿・門・板垣のほか、鳥居や宇治橋などを造り替える。また、新正殿に納める武具や楽器といった「神宝」、正殿の壁に張り巡らせる帳(とばり)などの「装束」、遷御の儀式に使う品々など計714種1576点も新しくする。新社殿などの造営には約1万2千本のヒノキが必要といい、経費の総額は前回より200億円以上多い、約570億円かかった。祭主で昭和天皇の四女、池田厚子さんを補佐するため、天皇陛下の長女・黒田清子さんが昨年、遷宮が終わるまでの臨時祭主に就任した。