週プレNEWS 10月18日(金)0時30分配信
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| 兄貴分の芦屋大学硬式野球部はすでに昨年から関西独立リーグの兵庫ブルーサンダーズの二軍として活動している |
甲子園を目標にせず、プロ野球選手の輩出を目指す。今までにない野球部が来年4月、誕生する。
その野球部を新設するのは、学校法人芦屋学園が運営する芦屋学園中学・高校(兵庫県芦屋市)。
チームの説明をしよう。
まず、高野連には加盟しない。当然、甲子園には出場できない。ただ、日本学生野球憲章の適用外となるため、プロの指導を制限なしに受けられる。その上で、関西独立リーグの兵庫ブルーサンダーズ(以下、兵庫)の三軍にあたる「育成軍」として練習に励み、最終的にプロ入りを目指すという。
とはいえ、球児にとって甲子園は憧れの舞台。芦屋学園はその球児の夢を断ち切ってまで、どうして新しいタイプの野球チームを創設することにしたのか? きっかけは兵庫の高下沢(こうげたく)球団代表の提案だった。
「自分は大学4年時に、(独立リーグ)四国アイランドリーグのトライアウトを受け、香川オリーブガイナーズに入団しました。その練習環境は素晴らしく、もし、大学在学中の4年間すべてここで野球をやっていたら、自分だってプロになれたかもしれないとまで思ったんです。それで兵庫の球団代表に就任した後、トップアスリート養成やスポーツによる地域の活性化などを掲げていた(芦屋学園運営の)芦屋大学さんに硬式野球部をつくり、うちの二軍として活動しませんかと提案した。2011年秋のことです」(高下氏)
これに大学側が賛同。選手を募ったところ、初年度は2名だったものの、2年目には15名の新入生が入部。選手らは兵庫の一軍メンバーと同じユニフォームを着て、連日、レベルの高い練習をこなすようになった。高下氏が続ける。
「今回、中・高チームをつくることになったのは、大学の野球部の好評ぶりを受けてのこと。中・高チームは兵庫の三軍(育成軍)の扱いとなりますが、すでに問い合わせもたくさん来ていて、甲子園常連校の4番バッターから編入の打診もあります」
強豪校の4番が編入を検討するほどのメリットとは?
「兵庫の二軍監督の池内豊氏(元阪神投手)、芦屋大学客員教授の片岡篤史氏(元阪神打撃コーチ)など元プロの指導を受けることができます。また、技術だけでなく、意識の高い独立リーグの選手と一緒に野球をやることで野球がどんどんうまくなる。事実、大学チームの選手は目に見えて実力が伸びています。甲子園のようにトーナメント制の試合もしないで済むため、無理な連投で肩を壊すケースなども防げます」(高下氏)
芦屋学園サイドも自信を見せる。
「このプロジェクトの趣旨は『スポーツを通じた人間力の育成』。野球は兵庫ブルーサンダーズで鍛えてプロを目指してもらいますが、もしプロになれなくても、芦屋学園が教員、指導者への進路を用意します」(芦屋学園・広報)
ただし、課題もある。球技ライターの大島和人氏が心配する。
「高野連に加盟しないため、公式戦に参加できないだけでなく、他校との練習試合もできない。社会人や専門学校とのリーグ戦や、夏休みの米国遠征などで年間60試合ほどをこなすと聞いていますが、実力差が目に見える大人のチームとの試合では真剣勝負になりにくい。力の均衡した同世代との試合ほど選手の成長は望めません」
中学卒業時にも“ハードル”が予想される。大島氏が続ける。
「そのまま高校に内部進学するかどうか疑問です。将来性のある生徒ほど、甲子園の常連校に流出するのでは。強豪校はプロへのルートだけでなく、有名大学への進学ルートも持っています。プロに行けるのはひと握りと生徒も親もよくわかっている。しかし、プロになれなくても、有名大卒の肩書を得られるという安心感が全国から有力選手を引き寄せているのです。プロ育成を売りにすることは、これとは逆。将来の安心という点で不利になりかねない」
なるほど―。でも、例えば、サッカーもかつてJリーグの下部組織の選手は高校サッカー部の選手より大学進学では不利だった。それが今では高校サッカー部より高い評価が与えられ、有名大学に多くの選手を送り込んでいる。
「逆風もあるでしょうが、それでも理念を貫き、頑張り続けられるかどうかでしょうね」(大島氏)
高野連主催の野球だけが高校野球じゃない。芦屋学園のチャレンジは日本の野球シーンに多様性と活力をもたらすはずだ。
(取材/ボールルーム)
最終更新:10月18日(金)16時0分
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