米盗聴疑惑:標的は独首相の党務用か セキュリティー弱く
毎日新聞 2013年10月26日 11時22分(最終更新 10月26日 16時27分)
【ベルリン篠田航一】米情報機関がドイツのメルケル首相の携帯電話を盗聴したとされる疑惑で、盗聴の標的となったのは首相の職務用携帯ではなく、自らが党首を務めるキリスト教民主同盟の「党務」で通話する携帯だった可能性が高いことが分かった。独紙フランクフルター・アルゲマイネ(電子版)など複数のメディアが25日、伝えた。党の携帯はメルケル首相が恒常的に使用し、首相用携帯よりもセキュリティーが弱いことから、情報機関の標的となった可能性があるという。
報道によると、「首相用」携帯は、通信の安全対策を所管するドイツ連邦情報技術安全庁の管理の下、今年7月に新型モデルに替えたばかり。だが「党務用」携帯はドイツ政府とは直接関係ないため「(同庁による)高度な盗聴防止対策が施されていなかった」(南ドイツ新聞)という。
メルケル首相は25日、欧州連合(EU)首脳会議のため訪れたブリュッセルで、「政府の費用を自分の党のために使っていると受け取られないよう、携帯を使い分けている」と説明。国家の重要な会話は「特別に安全対策が施された固定電話か、機密用の携帯電話を使う」と述べた。ベルリンで記者会見したシュトライター政府報道官代理も、首相の通話方法は「絶対に安全だ」と強調し、機密情報の流出はないことを示唆した。
党務用携帯盗聴の可能性についてメルケル首相は「安全対策が施されていない携帯の方が、理論上は盗聴対象になりやすい」と述べるにとどまった。
米情報機関の盗聴拠点について、南ドイツ新聞などは25日、「ベルリンの米大使館が盗聴に関与した」と伝えたが、シュトライター政府報道官代理は「そのような情報はない」と否定した。独情報機関トップら政府高官は来週にも訪米し盗聴疑惑の詳細な説明を求めるという。