大阪地下鉄値下げ:橋下市長の政治決断優先、民営化迫る
毎日新聞 2013年10月26日 09時15分
橋下徹大阪市長が市営地下鉄の初乗り値下げを指示し、市交通局は28日に経営会議を開いて、料金システム改修などに向けて動き始める見通しだ。運賃問題は経営を左右する「交通事業者の聖域」(藤本昌信交通局長)だが、値下げ先行を盾に民営化を議会に迫る橋下市長の「政治決断」が優先されることになりそうだ。
値下げは初乗り区間(3キロまで)のみで、2区(3〜7キロ)の運賃230円は来春、消費増税に伴って10円値上げする。民営化すれば、15年10月に2区の一部区間(3〜4.5キロ)は220円に値下げし、他区間は据え置くという。
国土交通省によると、過去に値下げした公営鉄道事業者はない。交通局は職員削減などで経営改善し、割高とされる運賃の値下げを民営化の「シンボル」とする狙いだった。
しかし、民営化には市議会(定数86)で3分の2以上の賛成が必要だ。議会は関連の条例案を3、5月と継続審議とし、今議会でも可決見通しはない。議会には、市東部を走る今里筋線の延伸や市営バス路線の維持などを求める声が根強く、民営化後にはこうした施策が白紙化されることを懸念している。
値下げの前提である民営化にめどが立たないため、交通局は9月末に凍結を表明したばかりだった。藤本局長は市議会で値下げについて、「民間会社であれば、社長に決めさせてもらいたいのが本音だ」と漏らした。25日にあった市の幹部会議でも、民営化の成否が見通せない情勢や値下げによる減収を懸念する意見も出たが、橋下市長の意思が変わることはなかった。【重石岳史】