メニュー偽装:業界関係者「氷山の一角」 表記、基準なし
毎日新聞 2013年10月27日 10時21分(最終更新 10月27日 16時23分)
「市場直送の新鮮魚介」「高原のヨーグル豚」……。ホテルの高級店には、産地やブランド食材を冠したメニューが並ぶ。全国チェーンのホテル関係者は「ホテルの料理は非日常を売りにする。華やかなイメージで客を引きつけるには、凝った名前や産地が欠かせない」と話す。しかし実態が伴わないケースも多い。プリンスホテル(本社・東京都)では今年6〜10月、レストランなど27店で66品に表示と異なる食材を使っていたことが発覚。地鶏ではない焼き鳥を「地鶏」として提供したり、アブラガニを「ズワイガニ」などと表記した。担当者は「調理現場は外来語や地名などを盛り込み、本格的なイメージを追求しがちだ」と話すが、食材業者は「高級食材は安定供給が難しく、代替品で間に合わせる場合もある」と明かす。
■現場任せ
「調理場は職人の世界。管理する側もなかなか立ち入れない」。大阪市内のホテル幹部は調理現場が聖域化しがちな実態を証言する。阪急阪神ホテルズの出崎(でさき)弘社長も24日の会見で、「社内の風通しが悪かった」とチェックが行き届かなかったことを認めた。対策を進めているホテルもある。帝国ホテル(本社・東京都)は08年、社内に「食の安全と信頼委員会」を設置。メニュー作成▽食材発注▽検品−−の各段階で、異なる担当者がメニューと食材の一致などを確認し、定期的に現場監査もしている。担当者は「現場の『良心』に委ねるとヒューマンエラーが起きうる。組織の管理体制が問われる」と警鐘を鳴らす。
「だます意図はなかった。偽装ではなく誤表示だ」。阪急阪神ホテルズをはじめ、問題が発覚したホテルの多くがそう釈明するが、消費者の視線は厳しい。食品会社のリスク管理に詳しい西澤真理子・東京大非常勤講師は「業界内の常識や慣行ではなく、消費者の立場で対応しなければブランドへの信頼を失う。消費者の側にもイメージに振り回されず、価値を見極める目が必要だ」と指摘する。