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TBS「報道特集」キャスターの金平茂紀さんのトークイベントが3日、宜野湾市のカフェユニゾンで開かれた。金平さんは、沖縄取材を振り返りながら映像や音楽を介して、沖縄とその文化が持つ力について語った。また報道現場にまん延し始めた自己規制や萎縮、鈍感さについても指摘。地域の豊かさを消さないためにも「過去の歴史、知恵を若い人に伝える努力が必要。自分たちの土地の持つ可能性に沖縄の人は胸を張っていい」と強調した。
トークは本紙連載をまとめた「沖縄ワジワジー通信」の出版を記念し開かれた。
金平さんは、1998年に本紙を取材したリポート映像を紹介。コザ騒動、海洋博、米軍普天間飛行場移設問題にからむ官房長官時代の野中広務氏の発言など、激動の歴史を地元紙視点から振り返った。
地域に沿った県紙の在り方は「メディアとしてまっとう」とする一方、自身が見る報道現場は、ヘイトスピーチを恐れた自己規制や、長いものに巻かれる意識が広がり、ものを言う力が弱まっていると懸念した。
ジャーナリストの先輩で、沖縄に思いを寄せ続けた故筑紫哲也さんについても触れ「筑紫さんは土地と文化を愛した。政治、経済から入っていくのではない報道の在り方を学ばされた。沖縄が持つ固有の文化の力は大きい」と主張。「深刻さも笑いに変えるユーモア、上から目線でなく共感で相手を取り込むセンスが報道に一番大切」と話した。
県内外のミュージシャンが山之口貘の詩を演奏したCDや、カリフォルニアのウチナーンチュが焦土と化した故郷を思い作った「ヒヤミカチ節」なども紹介。方言札のあった時代に実際に歌われていた標準語励行の曲も聞かせた。「古い習慣さらりと捨てて」「きれいな言葉は正しい人よ」などの歌詞に笑いが起きたが、金平さんは次世代に歴史と文化を伝える努力を怠れば、この歌が笑いにならない時代が再び訪れかねないと、警鐘を鳴らした。
最近の動きとして「沖縄独立」にも言及。被抑圧的な状況に置かれている先住民族について国連で独立を認める流れがあるとして、「沖縄が国内植民地という表現は、個人的には言い過ぎではないと思う。(沖縄が本土から)無視されているような状況で、日本から離れる選択肢は絵空事ではない」と述べた。