韓水原は6月、上級幹部約200人全員が辞表を提出したが、受理された例は伝えられず、「パフォーマンスにすぎない」との批判を受けた。
9月には、古里原発1号機(釜山市)で7月、点検の際に非常用発電機を全て止めてしまい、予備電源がない状態が18時間も続いていたことが発覚。不正にまみれた幹部はおろか、現場まで「国民の命を預かっている」との安全性に対する意識の希薄さを露呈した。
■原発依存を撤回 来年も続く暑い夏に寒い冬
韓国国民に原発の安全性に対する不安が広がるなか、朴槿恵政権が編成した官民合同のワーキンググループは、電力供給に占める原子力発電の比率を2035年に22〜29%とする草案を政府に勧告した。現在の原発依存度は26・4%。李明博政権は30年に41%とする計画を示しており、右肩上がりで進められてきた原発政策の撤回を意味した。
一連の原発不正を受け、韓国政府は今月、建設中も含めた全原発の過去10年間の書類約24万件のうち、2287件で偽造が確認され、9月末までに韓国電力の副社長を含む計100人を起訴したと発表した。同時に、業者との癒着を断つため、韓水原など原発関連の公営企業の幹部に関連会社への天下りを禁止したり、内部告発者に最高10億ウォンの報奨金を出すなどの対策を示した。
ただ、新たに手抜き整備疑惑が浮上した別の原発についても23日、調査のために運転停止が決められるなど、原発をめぐる不正やずさん管理はイタチごっこの様相を呈している。
不正に伴う再検査や再整備でどんどん原発稼働が遅れる状況を受け、有力紙の中央日報は社説で「今のところ、来年も暑い夏、寒い冬を過ごさなければならない」と悲観。書類偽造で停止した原発2基分の電力をまかなうだけで年4兆ウォン(約3900億円)に上るとし、原発不正全体での「被害規模は天文学的に増える」とも指摘する。
その上で、「数億から数十億ウォンの利益に目がくらんで国家に莫大(ばくだい)な損失を負わせた企業」だけでなく、「ぐずぐずした対応で被害を増大させた政府も責任を免れることはできない」と記している。