東洋経済オンライン 10月20日(日)8時0分配信
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なるか、三陸鉄道の脱「あまちゃん頼み」 |
NHKの朝ドラ「あまちゃん」で一躍、全国区になった岩手県久慈市を10月の三連休に訪れた。
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久慈駅前にあるビルには「北の海女」「北三陸鉄道」「潮騒のメモリーズ」の巨大看板が、ドラマで使われたそのままの状態で掲げられていた。
主人公たちが暮らす“袖が浜”こと小袖海岸は、路線バスで30分弱の距離にある。駅前のバス乗り場には観光客の長蛇の列ができており、1台では全員を乗せきれず、2台に分乗して動き出した。「8月には4台連なって運行したこともあります」と、係の人が教えてくれた。
■ 「あまちゃん」効果で観光客は23倍に!
今年7〜8月、小袖海岸の「海女センター」には7万5700人の観光客が訪れたという。前年同期は3250人というから、実に23倍も増えたことになる。
小袖海岸では地元のボランティアが、ドラマに使われたあちこちの場所について詳しく説明してくれた。そのにぎわいを楽しんだ後は、バスで再び久慈駅前に戻ってきた。
今回の旅の目的は、三陸鉄道の「お座敷列車」に乗ることだ。三陸鉄道はドラマでは「北三陸鉄道」という名前で、主人公や主人公の母親が東京へ旅立つシーンをはじめ、数々の重要な場面で登場している。「お座敷列車」は、地元アイドルとなった主人公たちが歌声を披露した列車でもある。「あまちゃん」ファンなら絶対に乗らずにはいられまい。乗車日の1カ月前に朝一番で予約して、指定券をゲットした。
出発の30分前に駅に着いたら、駅舎内や駅周辺は観光客でごった返していた。お座敷列車の定員は48人。どう見てもそれ以上の人がいる。全員がお座敷列車に乗れるはずがないと思っていたら、半分以上の人は2人のガイドさんに誘導されて一般車両に向かって行った。この人たちは旅行会社2社のツアー客だった。それぞれのツアー客たちは、久慈駅を出発すると途中駅で降りていった。最近は、三陸鉄道の体験乗車が旅行各社のツアー内容に含まれているようだ。
お座敷列車も満員で、しかも車内販売のグッズが飛ぶように売れていた。みな列車の車内外でたくさんの写真を撮っていたが、客層は家族連れが中心で、いかにも鉄道好きといった雰囲気の人は少なかった。「あまちゃん」の影響はあるにせよ、鉄道を巡る楽しみが広がっている状況を感じさせた。終点の田野畑駅に着くと、お座敷列車の乗客たちの多くが、折り返しの列車で再び久慈に戻って行った。
三陸鉄道は東日本大震災で鉄路が寸断され、一部区間はまだ復旧工事中。2013年3月期決算では、鉄道事業の売上高は2.1億円、営業損益は2.1億円の赤字だった。震災前の10年3月期は同営業収益3.7億円、同営業損益1.5億円の赤字だった。
一方で、車体ラッピング広告やグッズ販売といった関連事業収入は、震災前の2010年3月期は4699万円だったが、13年3月期は9025万円へと倍増した。今期は南リアス線での運転再開や「あまちゃん」効果もあり、鉄道収入、関連事業収入ともに増収となる可能性は大きい。さらに、全線復旧する14年度以降は、営業黒字化する可能性もあるのではないか。
■ まだまだ黒字化は厳しい? ?
こうした楽観的な見方を、三陸鉄道側は否定する。震災直後に望月正彦社長にインタビューした際、「全線復旧しても、沿線市民の利用は減少傾向にあり、収益好転は厳しい」と語っていた。1984年の開業当初は住民の足として活躍し、黒字が続いていたが、その後は少子高齢化、モータリゼーションといったマクロ的な状況に加え、沿線にあった病院や高校といった公共施設が移転して、直接的な利用需要が失われ、慢性的な赤字状態に陥った。全線復旧した後に何も手を打たなければ、元の状態に逆戻りだ。
最終更新:10月20日(日)14時0分
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