大学入試改革:「教育変える突破口に」 下村博文文科相に聞く
毎日新聞 2013年10月21日 東京朝刊
◆大変だと思うが、大学自らが変わるのを待っていても仕方がない。大学が「象牙の塔」になっていて、社会で真に必要とされている人材は何なのか、真剣に考えていない。この選抜方法をやるかやらないかは国が強制できる話ではないので、各大学の判断になるが、そういうことをやる大学には、国から補助金など、インセンティブを与えることがあっていい。大学入試を変えるのは、本質的にこの国の大学教育だけでなく、高校以下の教育も大きく変えることにつながる。突破口になる。
−−これからの大学に求められるものは?
◆日本は少子高齢化の中で、労働生産人口がどんどん減っていく。これからは一人一人の付加価値、つまり、労働生産性を上げていくしかない。そのための唯一のツールは教育だ。日本の大学進学率は52%で、経済協力開発機構(OECD)平均(60%)より低い。韓国やアメリカは約70%、豪州は96%だ。これからいかに質も量も高い高等教育を提供できるかを考えていく必要がある。
●危機意識が必要
−−具体的には。
◆質の面では教育機関として、大学が時代の変化にどう対応するか、危機意識を持ってもらわなければいけない。これまで大学には自分たちは研究機関で教育機関ではないという考えがあった。学生が勝手に頑張ってきた面もある。社会のニーズに的確に応えた教育を提供していくことが求められる。
量の面では18歳人口の進学率を上げると同時に社会人の学び直しの促進も必要だ。25歳以上で大学に行っている人の割合は、日本は2%程度だが欧州の多くの国々は15%を超えている。30歳になっても40歳になっても、大学にもう一度行き直して勉強して、また社会に戻ってくる、というサイクルを国全体でバックアップする仕組みを作らなくてはならない。
今は学費への公的支援が低く、個人負担が大きい。公的支援を充実させ、さらに貧富のハンディキャップをなくし、大学や大学院に行ける仕組みを作りたいと思っている。
◇「到達度テスト」など活用−−教育再生実行会議の改革案
国が進める大学入試改革は「一発勝負」「1点刻み」式の現行制度からの脱却と、学力保証の両方を満たす方向を目指している。
政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫早稲田大総長)で検討している改革案によると、二つの新テストを創設する。