MOON CHILDREN

赤い月が輝く夜には綺麗な花束を。

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影 売りませんか (3)

慎重に近づいて行く若い男性が呼び込みの男からボールペンを受け取り、

小汚い紙切れにサインをしたかと思うと

すぐに何枚もの福沢諭吉を数えて

鬱陶しいほどのテンションで街へ出かけていった。




祐介はその様子を始終観察していた。

良いとか悪いとか信用なら無いとかではなくて

その商売の異質さにとにかく目を引かれていた。


暫く見ていると悪寒がして 

また風邪を引いたか、と家へ引き返した。

影 売りませんか (2)

冷ややかに微笑する者もいれば、興味深く覗く者もいた。 一体何に使うんだ?そんなに高額で売れるのか? どうせインチキでしょう? さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。 種も仕掛けもございません。 影を売っていただくだけで良いのです。 ちょいと使用権を譲る、という事になるのだが 見た目に異変は何も無い。 現にワタシも ほらこの通り。 . . . 本文を読む

影 売りませんか

影 売りませんか 街頭にそんな広告が出始めたのは今年に入ってからで、 寒空の中に机やダンボールを出して手書きの広告を貼って あまり品のない呼び込みをしている姿がよく見かけられた。 奥さん、影売っちゃくれませんか。 なに、痛いことや精神的なダメージも無くって 外見は何も変わる事はない。 ただちょっと契約書にサインするだけさ。 . . . 本文を読む

帰宅

私は彼女を迎えに行く。 約束は随分前だったから場所も記憶の奥隅から 埃を払って出してきても、いまいちピンとこない。 きっと怒っているだろう。 水の波紋の様なインターホンが鳴り、 彼女の母親らしい人物が帰宅時にかける挨拶を私にすると、 鍵を開けた。妙な感じだ。 玄関からすぐ入った所に地下へ続く木目の階段があった。 その真上にある二階へ上がる階段は、 そっぽを向いたように地下への . . . 本文を読む