インフレーションとは、経済全体の財やサービスの価格(物価)が継続的に上昇する現象で、貨幣価値の下落を意味します。
インフレは、好景気でモノがよく売れて品不足にある状態です。企業業績は上昇して、従業員の給与も上がります。しかし、給与の上昇が物価の上昇に追いつかないために家計を逼迫します。実質所得は低下していき、生活は苦しくなっていきます。特に経済的弱者(年金生活者)の生活は非常に厳しくなります。
インフレ
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商品の値上げ。(企業業績好調)
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超過需要(品不足)
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社員の給料の上昇率は小さい。(実質所得低下)
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↓
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消費の減少(需要減少)
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供給不足
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しかし、多少のインフレは、経済が発展過程にある場合には投資を促進したり、支払金利がインフレで目減りして借金が容易になるなど、経済成長を促進させる要因ともなります。
≪インフレの種類≫
インフレの分類方法には、(A)発生原因による分類、(B)上昇速度による分類 があります。
(A)発生原因による分類
インフレには、発生原因が需要サイドにあるディマンド・プル・インフレーションや、発生原因が供給サイドにあるコスト・プッシュ・インフレーションなどがあります。
◆ディマンド・プル・インフレーション(Demand Pull
Inflation)
ディマンド・プル・インフレーションは、景気の加熱が原因となり、総需要が総供給を超えることによって生じるインフレで、需要インフレーションともいいます。発生原因が需要サイドにあるインフレです。
ほかにも、発生原因が需要サイドにあるインフレには、財政支出の拡大を原因として発生する「財政インフレーション」、貨幣の増刷により発生する「貨幣インフレーション」、銀行の信用創造による過剰な貸付によって生じる「信用インフレーション」、輸出が増加することによって生じる「輸出インフレーション」などがあります。
◆コスト・プッシュ・インフレーション(Cost Push
Inflation)
コスト・プッシュ・インフレーションは、賃金や原材料費の高騰が原因となり、生産費用(賃金、原材料、燃料費)が上昇することによって生じるインフレで、コスト・インフレーションともいいます。発生原因が供給サイドにあるインフレです。
ほかにも、発生原因が供給サイドにあるインフレには、海外のインフレにより輸入原材料の価格が上昇(1973年のオイル・ショックなど)することによって生じる「輸入インフレーション」などがあります。
分 類
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発生原因
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内 容
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ディマンド・プル・インフレ (需要インフレ)
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需要サイド 景気の加熱
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総需要が総供給を超えることによって生じる 総需要の増加>総供給の増加
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コスト・プッシュ・インフレ (コスト・インフレ)
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供給サイド 賃金や原材料費の高騰
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生産費用が上昇することによって生じる 生産コストの上昇率>労働生産性の増加率
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また、特定の生産要素の不足から、生産(供給)が需要を下回ることによって生じるインフレを「ボトルネック・インフレーション」といいます。生産要素とは、企業が財やサービスを生産するのに必要な資源(資本、土地、労働など)のことです。
(B)上昇速度による分類
インフレは、物価水準の上昇速度によって、クリーピング・インフレーション、ギャロッピング・インフレーション、ハイパー・インフレーションなどに分類されます。
◆クリーピング・インフレーション(忍び寄るインフレーション)
クリーピング・インフレーションは、物価水準が年率数%程度の割合で緩やかに上昇するインフレで、マイルド・インフレーションともいいます。
◆ギャロッピング・インフレーション(駆け足のインフレーション)
ギャロッピング・インフレーションは、物価水準が年率10%を超える割合で上昇するインフレです。
◆ハイパー・インフレーション(超インフレーション)
ハイパー・インフレーションは、物価水準が1年間に数倍に上昇するインフレです。
分 類
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物価水準の上昇速度
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クリーピング・インフレ(忍び寄るインフレーション)
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年率数%程度
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ギャロッピング・インフレ(駆け足のインフレーション)
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年率10%超
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ハイパー・インフレ(超インフレーション)
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1年間に数倍
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≪インフレ対策≫
インフレ時には、超過需要を解消させる方策を採用する必要があります。総需要を抑制する政策には、(1)公定歩合の引き上げ、(2)財政支出の削減、(3)増税をして消費を抑える、というような金融政策と財政政策があります。
◆スタグフレーション
スタグフレーションとは、インフレ(物価水準の上昇)と景気後退が同時に発生した場合のことをいいます。
スタグフレーション(stagflation:景気沈滞下のインフレ)は、スタグネーション(stagnation:沈滞)とインフレーション(inflation)の合成語です。
インフレの発生が景気の過熱と呼応する場合には、総需要を抑制する政策をとる必要があります。しかし、スタグフレーションの場合には、総需要の増減で景気を調整する政策は有効ではありません。
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