トップページ政治ニュース一覧特定秘密保護法案を閣議決定
ニュース詳細

特定秘密保護法案を閣議決定
10月25日 11時22分

特定秘密保護法案を閣議決定
K10055441811_1310251234_1310251240.mp4

政府は、25日の閣議で、特に秘匿が必要な安全保障に関する情報を「特定秘密」に指定し、漏えいした公務員らに最高で10年の懲役刑を科すなどとした「特定秘密保護法案」を決定しました。

政府は、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議、いわゆる日本版NSCの創設に合わせて、外国との情報共有を進めるための法整備が必要だとして「特定秘密保護法案」を25日、安全保障会議で了承したうえで閣議決定しました。
それによりますと、▽大臣など行政機関の長が、特に秘匿が必要な安全保障に関する情報を「特定秘密」に指定し、▽「特定秘密」を取り扱えるのは、大臣や副大臣、政務官のほか、「適性評価」を受けた公務員らに限るとしています。
そして、「特定秘密」を漏えいした公務員らに最高で10年の懲役刑を科し、漏えいをそそのかした者にも5年以下の懲役刑を科すとしています。
一方、法案には、▽国民の「知る権利」や報道・取材の自由への配慮を明記し、▽記者などの取材行為が、法令違反や著しく不当な方法によるものでないかぎり、正当な業務による行為とし、処罰の対象とならないことも盛り込んでいます。
また、「特定秘密」の指定期間は最長5年で何度でも更新できますが、通算で30年を超える場合は、内閣の承認を得なければならないとしています。
政府は、国家安全保障会議を創設するための法案とともに、今の国会での成立を目指すことにしています。

特定秘密保護法案とは

「特定秘密保護法案」は、日本の安全保障に関する情報のうち、特に秘匿することが必要とされる情報を保護することを目的としています。
法案では、▽特に秘匿が必要な安全保障に関する情報を、大臣など行政機関の長が「特定秘密」に指定するとしています。
▽指定の対象となるのは、自衛隊が保有する武器の性能や、重大テロが発生した場合の対応要領など、外交や防衛、スパイやテロといった分野の情報のうち、国や国民の安全に関わるとされる情報です。
▽「特定秘密」を取り扱えるのは、大臣や副大臣、政務官のほか、「適性評価」を受けた公務員らに限るとしています。
▽「適性評価」では、テロとの関係や、犯罪歴、薬物の使用、飲酒の節度、経済状態といった7つの項目に加え、家族や同居人の国籍などを、評価対象者の同意を得たうえで調べるとしています。
政府は、国家公務員の場合、およそ6万4000人が、「適性評価」の対象となるとしています。
一方、「特定秘密」の情報を漏えいした公務員らには、公務員に守秘義務を課している国家公務員法よりも重い、最高で10年の懲役刑を科し、漏えいをそそのかした者にも5年以下の懲役刑を科すとしています。
「特定秘密」の指定期間は、最長5年で、大臣など行政機関の長の判断で何度でも更新できますが、通算で30年を超える場合は、内閣の承認を得なければならないとしています。
また、法案には、国による情報統制が強まるという懸念があることを踏まえ、「国民の知る権利の保障に資する報道または取材の自由に十分に配慮しなければならない」と明記したほか、記者などの取材行為が、公益を図る目的があり、法令違反や著しく不当な方法によるものでないかぎり、正当な業務による行為とし、処罰の対象とならないことも盛り込まれています。
このほか、法案では、「特定秘密」の指定や解除、「適正評価」の実施について、行政機関によって基準が異なることのないよう、有識者会議を設けて統一基準を定めることを規定しています。

情報漏えいの具体例は法案別表に

大臣など行政機関の長が指定し、情報を漏えいすると処罰の対象となる「特定秘密」について、政府は、法案の「別表」に具体例を挙げています。
それによりますと、「特定秘密」は、「防衛に関する事項」、「外交に関する事項」、「特定有害活動の防止に関する事項」、「テロの防止に関する事項」のいずれかにあてはまるものとしています。
このうち、「防衛に関する事項」では、自衛隊の運用やその計画、防衛に関して収集した電波や画像の情報、それに、武器、弾薬、航空機などの種類や数量、防衛用の暗号などを対象としています。
「外交に関する事項」では、外国政府や国際機関との交渉などの内容のうち、「国民の生命および身体の保護、領域の保全その他の安全保障に関する重要なもの」のほか、外務省と在外公館との間の通信に使う暗号などを対象としています。
スパイ活動や大量破壊兵器の拡散などの「特定有害活動の防止に関する事項」と「テロの防止に関する事項」では、被害の発生や拡大を防ぐための措置とその計画・研究のほか、情報の収集整理またはその能力、特定有害活動やテロの防止のために使う暗号などを対象としています。

法整備のねらいは

政府が、「特定秘密保護法案」の成立を目指すのは、国家安全保障会議、いわゆる日本版NSCを、効果的に運用するためです。
外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議は、同盟国であるアメリカをはじめ諸外国と機密情報をやり取りすることから、政府は、情報の漏えいを防ぐための法制度がなければ、外国から重要な情報を迅速に得ることはできないとしています。
政府は、同様の法整備は、アメリカをはじめ、イギリス、フランス、ドイツでも行われているとして、必要性を強調しています。

法案巡り懸念や課題も

「特定秘密保護法案」を巡っては、国民の「知る権利」の観点から、懸念が指摘されています。
法案には、政府と与党側の調整の結果、記者などの取材行為が、公益を図る目的があり、法令違反や著しく不当な方法によるものでないかぎり、正当な業務による行為とし、処罰の対象とならないことが盛り込まれました。
ただ、「著しく不当な方法」や「正当な業務」という規定が、具体的にどのような行為を指すのか、定義があいまいだという指摘が出ています。
また、情報漏えいの厳罰化によって、取材を受ける公務員らが情報の提供に後ろ向きになり、「特定秘密」ではない情報まで開示されなくなるなど、結果的に国民の「知る権利」が損なわれるという懸念もあります。
さらに、「特定秘密」の指定期間が30年を超える場合、内閣の承認を得ることが必要となりましたが、内閣が承認し続ければ、政府にとって都合の悪い情報が隠されたままとなるおそれもあります。
このため、「特定秘密」の指定にあたっては、その判断が妥当かどうかをチェックする機関の必要性が指摘されています。
また、「特定秘密」を扱う公務員らに対する「適性評価」について、「飲酒の節度」や「借金などの経済的な状況」なども対象とされ、プライバシーの保護の観点から問題視する声も上がっています。

専門家情報公開態勢作りを指摘

秘密保護と情報公開の両立は、日本だけでなく各国にとって重要な課題ですが、公文書管理を担当する日本の国立公文書館は、職員の数がアメリカのおよそ60分の1で、専門家は、日本も情報公開の態勢作りが必要だと指摘しています。
先月、衝撃的なニュースが世界を駆け巡りました。
1961年、アメリカ南部に墜落した爆撃機から落下した水爆で、ほとんどの安全装置が解除されていたというものです。
当時のケネディ政権は、深刻な事故ではないと説明していましたが、必ずしもそうではなかったことが半世紀をへて明らかになりました。
このニュースは、機密指定が解除され新たに公開されたアメリカの公文書が基でした。
公文書について、アメリカでは、国立公文書館が政府機関に対し不必要に機密に指定したり指定解除を長引かせたりしていないか監査する権限を持っています。
常勤の職員は2671人います。
日本にも国立公文書館がありますが、同じような権限はなく常勤の職員は45人とアメリカのおよそ60分の1です。
日本の国立公文書館は、昨年度、197万件の公文書について各省庁と協議し、重要な公文書が廃棄されることのないよう内容をチェックしました。
単純に計算すると、職員1人当たりおよそ4万件の公文書となり、現場のひっ迫した状況がうかがえます。
日本では、2年前、公文書管理法が施行されました。
年金記録のずさんな管理や、薬害肝炎患者に関する資料を国が放置した問題などが背景にありました。
法律では、公文書の保存だけでなく、国民への説明義務を果たすとともに政府の意思決定の過程を検証できるようにするため、重要な会議の記録を残すよう定めています。
しかし、菅政権当時、原発事故を巡る重要な決定を行ってきた政府の原子力災害対策本部が、議事録を作成していなかった問題が明らかになり、公文書の保存や管理の在り方が改めて問われました。
公文書の問題に詳しい早稲田大学大学院客員教授の春名幹男さんは「秘密の保護と情報の公開は車の両輪だが、日本は情報公開が遅れている。秘密の保護だけが先行するのは問題であり、国民の知る権利と情報公開に応えることができる態勢作りを同時に進めるべきだ」と指摘しています。

[関連ニュース]
k10015544181000.html

[関連ニュース]

  自動検索

特定秘密保護法案 今国会で成立を (10月25日 19時13分)

日弁連 特定秘密保護法案反対訴え (10月24日 4時38分)

秘密保護法案を自公が了承 国会提出へ (10月22日 18時5分)

秘密保護法案 自民が了承 国会提出へ (10月22日 14時47分)

このページの先頭へ