MOON BABY

赤い月が輝く夜には綺麗な花束を。

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ある日

クリスマスイブに青年は恋人と賑やかな街へデートに来ていた。
緑や赤の華やかな外装を施した店。
てっぺんに星の付いた大きなクリスマスツリーのある大通りには沢山の人が楽しそうに歩いている。
風船を持って走り抜ける子供達の後ろで彼らの父親らしき人が、大きなリボンのついた赤い箱を二つ持って忙しそうに追いかけている。
そんな温かい光景は寒い夜に肩をすぼませて歩く大人を少し楽にした。


緑色や赤色の光を着た、もみの木の下で4人ばかりのジャズバンドが演奏していた。
その横で青年は一大決心を決めようとしていたのだった。

「じゃあまた」と手を振って帰ろうとする彼女を青年は引き止めた。
「どうかしたの?」と不思議な顔をする彼女に対して青年はポケットの中にある小さなリボンの付いた箱を強く握っていた。
そして彼は覚悟を決めて言った。



「先週、就職が決まったんだ。IT企業の仕事なんだけれど、ある企業の社長さんが僕を気に入ってくれて、最初は雑用みたいな仕事だけだが、しばらくしたら大きな仕事を任せてくれると言うんだ。何億っていう凄いでかい金が動く仕事だ。やっと僕も一人前の人間になったんだ、、だから僕と、、」



「そんな、、、」青年の恋人は何か言いかけてためらった。
そして頭を少し下げると人ごみの中へ消えて行った。



残された青年は彼女の心情が解らないわけではなかった。
最初は観客が少なかったジャズバンドも徐々に人が増えて行き最後は大きな拍手でラストを迎えた。
それを見ていた青年は悔しさからか、また他の何かからかは解らないが手を強く握っていた。


明日また彼女に電話してみよう。
この指輪を渡すのは大分あとになってしまいそうだが、いつか必ず渡そう。


かくして少年は、「また」動きをみせた。
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ポケットの中に

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