毎日新聞 10月19日(土)9時15分配信
NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」で一躍脚光を浴びた海女。日本海沿岸の海女発祥の地とされる福岡県宗像市鐘崎(かねざき)では、現役の海女は2人だけの状態が10年以上続いている。地元が誇る伝統が途絶えかねないと、同市と地元漁協は公募による後継者育成の検討を始めた。
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江戸時代の儒学者、貝原益軒は著書の中で鐘崎海女の技術をたたえた。最盛期の江戸時代には約300人が活躍。長崎県壱岐・対馬や石川県輪島市などに出稼ぎに行き、そのまま住み着くケースもあったという。女性は長らく漁の主役だったが、戦後、ウエットスーツの普及で男性の海士(あま)も増えている。
現役の2人は、北川千里さん(72)と松尾美智代さん(58)で、いずれも物心ついた頃から海に潜り、20代で漁を生業にした。北川さんは「私から海を取ったら何も残らない。毎日潜りたい」と言い、松尾さんも「三女を出産した前日まで潜っていた」と笑う。共に後継者不足を嘆き「できる限りのことはします」と技の伝授を約束する。
海女を公募するといっても、漁期は春のワカメや夏のアワビ、サザエなど半年ほどと短いなど課題も多い。谷井博美市長は「宗像の伝統を守るという方向で漁協と協議している。海女を漁業振興のシンボルにしたい」と話す。【山下誠吾】
最終更新:10月19日(土)11時1分